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プロ野球PRESSBACK NUMBER
電撃トレード、妊娠中の妻を残して北海道へ…プロ11年・谷内亮太が“守備で生きる”と決めた日「栗山さんの言葉は本当に嬉しかった」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/29 11:01
2018年12月11日、秋吉亮(右)と共に2対2の交換トレードでヤクルトから日本ハムに移籍した谷内亮太
プロ野球人生を振り返って、谷内が感謝するのは家族の存在だ。夫人の美寿希(みずき)さんは、同郷・石川県出身で同学年。國學院大1年の時から8年の交際を実らせて2018年2月に結婚した。日本ハムへのトレードを告げられたのは、第1子の妊娠中。以降、関東で愛娘2人を育てながら、北海道に“単身赴任”する谷内も支えてきた。
「僕は色々なことを考え過ぎてしまうタイプなので、前向きでちょっとフワフワしたところのある彼女には助けられました。最後に引退を決断する時も、僕は人生においても重い決断になると本当に迷っていたのですが、『あなたの決めた道なら全力で応援するよ』とバンと背中を押してくれました」
「ミスをしたチームが負けるのではない」
今シーズンからは一軍の内野守備走塁コーチに就任し、若い選手たちと向き合う。目下の課題は、昨シーズン12球団ワーストの94失策を喫したチームの守備力向上だ。現役時代に可愛がっていた三塁手の野村佑希は、谷内から言われた「ミスしたチームが負けるのではなく、ミスをカバーできなかったチームが負けるんだ」という言葉を大事にしているという。
「野球は、例えばショートがショートバウンドで投げてもファーストが捕ればアウトだし、誰かがエラーしてピンチが広がっても誰かが際どい打球をアウトにすれば0点。カバーしあえるスポーツだと思う。お互い助け合っていこうという気持ちが積み重なっていけばミスがミスじゃなくなる。そういう内野陣になればいいなと思っています。
それこそ、コーチの僕だって1年目だし絶対にミスはしますから、選手に助けてもらうことも沢山あると思う。自分もミスした時は選手にちゃんと謝って、いい関係性を作っていきたい。何かを強制するのではなく、本人がどういう選手になりたいのかしっかりコミュニケーションをとりながら一緒に取り組んで行きたいです」
選手時代から人間力の高さは球界屈指と言われた谷内。チームメートのみならず球団職員や裏方、メディア関係者にも愛され、頼られていた。組織の中で自らを輝かせる道を切り拓いてきたいぶし銀は、若いチームに確かな礎を築く光となるに違いない。