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プロ野球PRESSBACK NUMBER
電撃トレード、妊娠中の妻を残して北海道へ…プロ11年・谷内亮太が“守備で生きる”と決めた日「栗山さんの言葉は本当に嬉しかった」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/29 11:01
2018年12月11日、秋吉亮(右)と共に2対2の交換トレードでヤクルトから日本ハムに移籍した谷内亮太
飯山裕志。守備固めとしての出場が3年連続リーグ最多を誇るなど、まさに守備のスペシャリストとして長らく日本ハムに貢献してきた。2017年限りで現役引退した「守備職人」というポジションが“空いている”のではないか。谷内はそう思った。
「各球団にそれぞれの文化というか、伝統のようなものがあると思うんです。ファイターズには長らく飯山さんという、最後に守備に行く存在があった。それは飯山さんにしかできない仕事でした。飯山さんがいらっしゃらなくなった後で、自分がそういう存在にはまれば一軍に居続けられるのではないか。当時の栗山(英樹)監督もおそらく、そういう仕事が大事だという考えがあるのではないか、と思いました。特別な存在だった飯山さんに、自分から似せていったところもあるかもしれません」
日本ハムでの1年目時点ですでに28歳。そこから自らの方向性を守備だけに振り切った。ひたすら取り組んだのは、徹底して「数をこなす」ことだ。練習中は、どんなに時間が無くても各ポジションで必ずノックを受けた。試合前練習では、バッティングを終えた後にもう一度グラブを手にして各ポジションを回りながら打球を捕る時間を作った。
「自分で守備を上手いと思ったことはないし、器用でもない。だからひたすら打球を受けて色々な感覚を養うことが大事でした。ショートに入って景色を見て打球の感覚を味わって、サードに行って飛び込んでみたり。ナイターで守備固めとなると、試合に出るのは夜8時半ぐらいから。そこで不安なく入るためには、練習時間は最後までいっぱいいっぱいに使いましたし、試合中も守備に関するデータを見るようにしていました」
「サードの谷内は“オレ様”」
全体練習では極力全てを守備の時間に使い、「本当は好き」というバッティングは自主練習で補った。移籍2年目の2020年は守備固めを中心に50試合出場。オフに腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けて迎えた2021年は、開幕直前に実戦復帰し106試合に出場するなど、チームに不可欠な存在となった。
内野の4ポジションを守り分けるうえで、谷内にはちょっと独特な感覚があるのだという。
「人格を使い分ける、という感覚ですかね。各ポジションで意識することや気持ちの持ち方を自分の中でシンプルにまとめておいて、それを使い分ける。例えばショートって色々な所を見て情報を入れておかなければいけないので、常にキョロキョロして周りと連携をとることが大事。色々な方向に動ける準備もしなければいけません。“ショートの谷内”は気遣い屋です。でもサードになったら、飛んで来る速い球に対していかに反応するかが大事なので、自分のプレーに集中して神経を研ぎ澄ませる。基本的に後ろを向くこともないので、“サードの谷内”は割とオレ様、です(笑)」