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《30歳でのキャリアチェンジ》元日本代表・江坂任がJリーグより韓国・蔚山現代を選んで得た成長「素直に優勝は嬉しかったですが…」
text by
姜亨起Kang Hyeong Gi
photograph byFA photos
posted2024/01/27 11:00
蔚山現代でMFとしてプレーする江坂
そして同年夏、浦和へ完全移籍。柏でキャプテンマークも巻いたエースのシーズン途中退団は「電撃」とも報じられたが、浦和では冬の天皇杯決勝で先制点を決め、3大会ぶり制覇を牽引。翌2022年シーズン開幕前のスーパーカップでも、2得点の活躍でチームを16年ぶり優勝に導くなど、新天地で着実に評価を高めていた。
しかし、江坂の出場機会はシーズン中盤以降から減少。徐々に後半の切り札としての起用が増え、必然的にプレータイムも少なくなった。ACL決勝トーナメント準決勝の全北現代モータース戦ではPK戦最後のキッカーを務め、見事成功して浦和のファイナル進出に貢献したが、江坂個人としては悔しい思いも残る1年だったはずだ。
そんななか届いたのが、韓国王者からのオファーだった。
「もちろん、Jリーグの他のチームというのも選択肢にはありました。ただ、やっぱり蔚山からオファーをいただいたっていうところと、この年齢でチャレンジしたい、海外でチャレンジしたいという思いもあって、蔚山に決めさせてもらいました」
浦和は2022年12月26日、江坂の蔚山への完全移籍を発表した。当時のコメントでは「誰も知らないところで、自分がサッカー選手としても、人としてもまだ成長できるのではないかと思い、決断しました」と本人は伝えていたが、Jリーグファンからすれば江坂が海外、それも韓国に移籍するとは誰も予想していなかっただろう。
決断の理由
江坂本人も多くは語らなかったが、慣れ親しんだ日本を飛び出したのは30代という年齢でもさらなる飛躍を求める挑戦心があったからに違いない。
「当然ですが、言葉が違う、考え方が違う、文化が違う。その意味で、Jリーグでは当たり前だったことが韓国では当たり前ではなくなるので、そこはやはりプレーで示さないといけない。もちろんコミュニケーションも大事で、韓国語は毎日短い時間でも勉強していましたし、サッカーに関してはある程度意思疎通ができるレベルにまではなりましたが、どちらかと言えば、プレーで証明しなければならないと思っていました」
JリーグとKリーグとで異なる自身の“立場”ということもあるだろう。日本で外国籍選手のことを“助っ人”と呼ぶように、韓国では国外からやってきた選手を「ヨンビョン(傭兵)」と呼ぶ。それだけ結果が求められる立場であり、活躍できなければ国内選手以上に厳しい評価を下される。そのことは、江坂自身も渡韓前から強く認識していたという。
しかし、待ち受けていたKリーグ生活は苦難の連続だった。
2023年シーズン開幕戦、途中出場から公式戦デビューを飾った江坂だが、序盤から負傷に悩まされ、一時はリーグ戦7試合連続ベンチ外という時期もあった。