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《30歳でのキャリアチェンジ》元日本代表・江坂任がJリーグより韓国・蔚山現代を選んで得た成長「素直に優勝は嬉しかったですが…」
posted2024/01/27 11:00
text by
姜亨起Kang Hyeong Gi
photograph by
FA photos
「まるで、K-POPか何かのライブかと思いましたよ。Jリーグでもあまり見たことないような光景でしたね」
江坂任はそう言いながら、苦笑いを浮かべた。
柏レイソルや浦和レッズで活躍し、2021年には日本代表に選出された。そんな江坂が現在は韓国Kリーグの蔚山現代でプレーしている。蔚山は昨季Kリーグを制してクラブ初の2連覇を達成した。江坂も王者の一員として、優勝セレモニーのピッチに立った。
「素直に優勝は嬉しかったですが、セレモニーがだいぶ長くて……すべて終わるまでに1時間半から2時間はかかったと思います。歌手の方が来てステージを披露したりもしていましたし、トロフィーアップの後、監督や選手が一人ひとりサポーターのいるゴール裏に挨拶する時間があって、それがかなり長かった。韓国らしいエンタメ要素が強いなと感じましたね」
その“かなり長かった”ゴール裏への挨拶には江坂も呼ばれた。「アタル!」の声援を受けるなか、サポーターの前に立った江坂は通訳を介して日本語で感謝のコメントを伝えると、最後は手に持ったマイクにこう叫んだ。
「チギネ!」
叫ぶ直前、隣の通訳から何か耳打ちされていたから、その言葉をそのまま伝えたのだろう。
「チギネ」とは韓国語の方言の一つで、いわゆる「素晴らしい」「すごくいい」といった意味だ。ニュアンスとしては、彼が浦和レッズ時代のヒーローインタビューでよくシャウトしていた「最高でーす!」と似たものと捉えて良い。そんな“煽り”には蔚山のサポーターも拍手と歓声で応えていたが、Jリーグとは異なるスタジアムの雰囲気も江坂は新鮮に感じたようだ。
「個人的な感覚ですけど、Kリーグ全体で女性の観客が多いように感じました。選手がアイドルのように見られているというか、ファンの方々もアイドルに会いに来ているような……。そういった雰囲気の違いは蔚山に限らず、リーグ全体で感じました」
Kリーグでは、観客の女性比率が2019年シーズンと2023年シーズンを比較して15ポイント増の47%を記録した。韓国代表でも、昨年11月のW杯予選ではチケット購入者の65%が女性だったというデータもある。
「自分は前年まで浦和にいたので、そこの違いを強く感じましたね。浦和では黄色い声援というより、まさに熱い声援を受けていたので」
元日本代表への韓国からのオファー
1992年生まれで現在31歳の江坂は、神戸弘陵学園高校、流通経済大学を経て2015年にJ2のザスパクサツ群馬でプロデビュー。大卒ルーキーながらリーグ戦全42試合出場、チーム最多の13得点をマークし、翌2016年には当時J1の大宮アルディージャへ“個人昇格”を果たした。
2018年から加入した柏レイソルでは1年目から背番号10番を背負い、絶対的な司令塔として攻撃の中心を担った。それまで世代別代表への選出歴もなかったが、2021年3月には韓国代表との国際親善試合で日本代表初招集。途中出場からデビューを飾り、コーナーキックからアシストも記録した。