- #1
- #2
箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根駅伝5区「ゴール後の感動的ハグ」には続きがあった…「都道府県駅伝で応援に行くから」大東大選手が明かす秘話「陸上を離れた時期もありました」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/20 11:05
ゴール後、芦ノ湖のほとりでお互いのレースと今後について話す法政大・細迫海気と大東文化大・菊地駿介。大学を超えた併走劇には前日譚と後日談があった
「こんなに寒くなるって当日まで思っていなくて、アームウォーマーを持ってきていなかったんですよ。それを仲間が持ってきてくれて、自分は体中にワセリンを塗ったり、ユニフォームの下にレジ袋をつけたりして、寒さ対策はけっこうしました」
あの快走の裏には、そんな工夫もあったのだ。
「お前はもうテレビ版のび太じゃない」→聞こえず
法政大の細迫とデッドヒートを繰り広げる中、今回も監督からユニークな檄が飛ぶ。
「お前はもうテレビ版のび太じゃない。映画版のび太だー!」
だが、菊地の耳に、監督の声は届いていなかった。
「多分、ジャイアンを助けられるくらいバージョンアップしたってことなんでしょうね(笑)。監督には本当に申し訳ないんですけど、今回は何も聞こえてなくて。いつも人の多いレースは緊張するんですけど、それくらい集中できていたんだと思います」
菊地が5区区間4位と踏ん張ったことで、大東大は往路を終えてシード圏内の8位につけた。このまま順位をキープできれば念願のシード獲得となるが、駅伝はそれほど甘くない。切り札として期待された8区のワンジルが区間最下位と大ブレーキ。この時点でチームはシード圏外の11位に転落した。次の9区を終えて、10位東海大との差はわずかに4秒。
驚いた後輩たちの激走と再逆転劇
菊地は気が気でなかったと話す。
「9区と10区は下級生だったので、楽しく走ってくれたらって思っていたんですけどね。自分たち4年生はもう走り終えていたので、ゴールエリアで待っていることしかできなくて。でもほんと、2人が諦めずに走ってくれた。絶対にシードを取るって気持ちがあったからこそ、あの走りができたんだと思います」
最終10区の佐々木真人(3年)が区間7位と好走。大逆転で10位に滑り込み、大東大は9年振りとなるシード権を獲得した。
苦しい時期の方が長かった4年間なんですけど…
アンカーの佐々木に駆け寄り、菊地は後輩の肩にタオルを掛けた。いつものような笑顔ではなく、クシャクシャに泣いていた。