「チームに戻ってからも結果は出てなかったので、監督が来るとなって安心しましたし、一筋の希望が見えた気がしましたね」

真名子マジック

就任2シーズン目でシード権を獲得した真名子監督。実力のある高校生も続々と大東文化大に入ってきている　©Yuki Suenaga

　高校陸上界の名将は、舞台を大学に移してもその手腕を遺憾なく発揮した。着任したシーズンにチームを5年振りの全日本大学駅伝出場に導くと、箱根の予選会も堂々の首位通過。4年振りに本戦出場を果たした。

　まるで「真名子マジック」とでも名付けたくなるような快進撃の始まりだったが、菊地の目から見て、監督はどのような魔法の持ち主なのか。

「監督が来て、やっぱりチームがすごく良くなったんですね。月に一回、誕生会を開いたり、全員で大掃除をしたり、みんなでやることがすごい増えたなって。自分たちは個々がバラバラな状態を経験していたので、そこが前とは大きく変わった。もちろん走る量もすごく増えたんですけど、それ以上に雰囲気が変わりました」

4年ぶりの通過を果たした2022年の箱根駅伝予選会にて　©Yuki Suenaga

お前はのび太だ

　前回の箱根駅伝で、菊地は山の5区を任された。登りは得意ではなく、志願したわけでもなかったが、走力とセンスを見込まれての抜擢だった。

　監督にとっても指導者として臨む初めての箱根だったが、緊張などは皆無だったようだ。当時、菊地への声がけが、一部ファンの間で話題となった。

「ドラえもんですよね（笑）。『お前はのび太だ。ジャイアンに追われていると思って、思い切って行け』って。僕がアニメ好きなのを知っていて、監督の引き出しの中から必死に探してくれたんだと思います。監督はアニメに詳しくないから、多分、世代的にドラえもんくらいしか知らなかったのかも。けっこう沿道の方も笑っていて、僕もリラックスして走れました」

3年時は「思ったより走れた」感覚だったそう。笑みを見せながらゴール　©Nanae Suzuki

　3年生の時の箱根は5区を走って区間12位。急ごしらえにしては十分に合格点が与えられる走りだった。レース後に監督から「けっこう登れたな。来年もお前に任せるから」と言われた菊地は、この1年間、登りを意識してトレーニングに励んできた。

仲間が持ってきてくれたアームウォーマー

　前半こそ貧血の影響で出遅れたものの、「大学で一番練習ができた」という夏合宿を乗り越え、万全の状態で2度目の箱根駅伝を迎える。唯一予想外だったのが、当日の雨だった。

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