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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根駅伝5区「ゴール後の感動的ハグ」には続きがあった…「都道府県駅伝で応援に行くから」大東大選手が明かす秘話「陸上を離れた時期もありました」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/20 11:05
ゴール後、芦ノ湖のほとりでお互いのレースと今後について話す法政大・細迫海気と大東文化大・菊地駿介。大学を超えた併走劇には前日譚と後日談があった
「監督は、実業団時代に心房細動という病気が原因で引退を余儀なくされていて、その時やっぱり、やりきれなかったという悔いが残ったそうなんです。『体が丈夫なら、続けられるうちは続けた方が良いよ』って。『たとえ失敗したとしても、経験をすればするほど下に伝えられることはたくさんあるから』と。そう言われて踏ん切りがついたというか。もう一度、結果にこだわらずやってみようって。そう思いましたね」
自分には戻れる場所があるんだな
それまでは責任を背負い込みすぎていたのだろう。自分がエースになってこのチームを支える。いや、支えなければいけないと思うことで、自身への期待をプレッシャーに感じてしまった。もっと楽しく走れば良いのだと、恩師の言葉が気づかせてくれたのだ。
チームに戻りたい旨を伝えると、監督や仲間は喜んで受け入れてくれた。菊地はそれも嬉しかったと話す。
「先輩も同級生もすごく温かく迎え入れてくれて、自分には戻れる場所があるんだなって。このチームでもう一度頑張りたいと思いました」
大和にすごく勝ちたいと思った
2年目もチームは予選会で敗れ、箱根の本戦出場はならなかったが、走路員として見たレースで、中央大の吉居大和が素晴らしい快走を見せた。1区を独走し、区間新記録を樹立。元チームメイトの活躍もまた、大きな刺激になったという。
「自分が落ち込んでいるときに、大和がああいう走りをしてくれて、やっぱり大和にすごく勝ちたいと思ったし、あの走りにすごい勇気をもらった部分がありました。やっぱりここで辞めたらダメなんだ。憧れだった舞台に、今度は自分が立たなきゃって。箱根を走りたい思いがますます強くなりました」
一筋の希望が見えた
大学3年の春、人生の歯車が音を立てて動き出す。仙台育英高を辞め、大東大の新しい監督として真名子氏が招聘されたのだ。菊地にとってはまさに運命の再会だった。