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トルシエ「それは違う。君は幾度もこの質問をするが…」ホンネで語る小野伸二と黄金世代「真のオノと出会ったのはワールドユースだ」
posted2024/01/14 17:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
AFLO
日本代表のアジアカップ初戦、ベトナム代表を率いる監督フィリップ・トルシエにとって、小野伸二は特別に感慨深い選手のひとりである。1998年に日本代表監督に就任したトルシエの日本での冒険――2002年日韓W杯を目指す長い道のりは、いわゆる「黄金世代」とともに参加した1999年ナイジェリア・ワールドユース選手権(現U-20W杯)から本格的にはじまった。
稲本潤一や高原直泰、本山雅志、遠藤保仁、小笠原満男、中田浩二……。後に日本代表に11人を送り込んだ、トルシエ・チルドレンともいえるユース代表組を象徴する存在が小野伸二であった。
あれから20年以上が経ち、トルシエは今、どんな思いを小野に抱いているのか。26年間の現役生活の末にスパイクを脱いだ小野に、トルシエはどんな言葉を贈ったのか。前後2回にわたりトルシエインタビューをお届けする。まずはその前編から。<全2回の1回目/後編につづく>
彼の最後の試合をもっと前に知っていたら…
――小野伸二が今季(2023年)限りで引退を決めました。
「とても残念だ。彼の最後の試合が12月3日(J1リーグ最終節、北海道コンサドーレ札幌対浦和レッズ戦)なら、私も行くことが可能だったからだ。もっと前に知っていたら……」
――小野の第一印象はどうでしたか。実際に見る前に、フランスW杯のビデオで彼を見ましたか?
「日本で実際に会う前に、彼のさまざまな情報は得ていた。非凡な才能を持った若手であり、18歳ながらW杯にも出場した。だから私の中には彼のイメージがすでにあった。
初めて会ったのはJヴィレッジの合宿だったが、私にとっては……君は私のメソッドを知っているだろう。私は選手の能力を称賛しない。たいていの場合、それはプレスの評価であるからだ。私に必要なのは私自身の評価であり、ピッチの上での選手の評価だ。だから小野の情報は事前に得てはいたが、私にとっての現実はピッチの上の彼がどうであるかだった。
私は選手を裸にする監督といわれている。選手はある種のオーラを纏って代表にやって来る。スターとしての名声があり、神的な存在ですらあるが、それはメディアによって作られたものだ。私の第一のステップは選手を丸裸にすること――私の要求に応えられるかどうかを明らかにすることだ。そこにはときに軋轢が生じる。選手はスターであり、しばしば私の求めるものではない態度でやって来るからだ」
小野からそこまで強い印象を受けなかったワケ
――実際に見た小野はどうでしたか?