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「せやかて工藤…!」箱根駅伝でトレンド入り“山の名探偵”工藤慎作が解いた早稲田の「山問題」…直前まで絶不調→見つけた《たったひとつの真実》
posted2024/01/09 06:00
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Nanae Suzuki
「“山の名探偵”トレンド入りだって」
1月2日の芦ノ湖、箱根駅伝・往路の激戦を終えたあとのことだ。運営管理車を降りた早稲田大学の花田勝彦駅伝監督は、5区を走ったルーキーの工藤慎作を労うと、こんなことを口にした。
Xでトレンド入りした“山の名探偵”とは、花田監督が工藤に授けたニックネームだ。これまで早稲田は箱根の山に課題を抱えることが多かったが、今回、工藤がその難問に立ち向かった。そして、1年生にして区間6位と好走し、1つ順位を上げる活躍を見せた。もちろん“山の神”の領域にはまだまだ遠いが、“名探偵”として早稲田の山問題の解決の糸口をつかんだ、というところだろうか。
上り適性の片鱗を見せていた高校時代
工藤が山適性の萌芽を覗かせたのは八千代松陰高校時代に遡る。
全国高校駅伝では、上り基調の3区で、2年時が区間6位、3年時が区間5位と2年連続で好走しており、ロードの上りへの適性を見せていた。
特に3年時は留学生とも互角の勝負をし、チーム3位の大きな力となった。同じ区間を走った佐久長聖高の吉岡大翔(現・順大)の活躍の陰に隠れてしまったが、当時のトラックでの持ちタイムを考えればもっと騒がれても不思議ではないほど工藤の走りも見事だった。
そして、大学に入学する前に参加した鴨川合宿で、上りの走りを見た花田監督が“山の名探偵”と命名した。漫画『名探偵コナン』の主人公(工藤新一)と名前が似ていたのはたまたまで、メガネをかけて走るルックスが、花田監督に『名探偵コナン』を連想させたことが由来だ。そのニックネームにはもちろん箱根駅伝の5区での活躍への期待が込められている。
ちなみに、高校時代の工藤は、数多くの難関大学合格者を輩出している特進コースに在籍し、文武両道を貫いた。本人いわく「勉強も得意ということにしておきます」とのことだが、実は名探偵ばりに明晰な頭脳の持ち主でもある。