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「せやかて工藤…!」箱根駅伝でトレンド入り“山の名探偵”工藤慎作が解いた早稲田の「山問題」…直前まで絶不調→見つけた《たったひとつの真実》
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/09 06:00
初の箱根路で5区区間6位と好走を見せた早大のルーキー“山の名探偵”こと工藤慎作。直前までの絶不調からの復活の裏にあったのは?
早稲田には2年連続で箱根の5区を走った伊藤大志(3年)がいるが、伊藤の場合、上りへの適性というよりも走力でカバーしたという印象が強い。トリプルエースに数えられる伊藤を平地区間に起用するほうが、早稲田にとってはアドバンテージが大きい。それだけに早稲田には山のスペシャリストの登場が待たれていた。
「普段はほわーっとしていて、強そうに見えないんですよね。でも、いざ走ったら、“どこにそんな強さがあったんだ”って思うほどの強さを見せるんですよね」
花田監督は工藤をこう評する。その通りに、普段のおっとりした様子からレースになると一変。大学に入学してすぐに、工藤はハイパフォーマンスを連発した。
4月の東京六大学対校では5000mの対校選手としてさっそく臙脂のユニフォームに袖を通し、自己ベストで6位入賞。1万mでは、4月に28分31秒の好記録をマークすると、5月の関東インカレでは他校のエース格と渡り合って6位入賞を果たしている。
春先から夏は好調を維持していたが…?
「“1年生にもかかわらず、こんな成績を残せた”と言われると思うんですけど、それで満足していてはダメだと思う。これから先を見据えたときに、学年に関係なく、強い人たちにトライしていきたい」
こんな強気な発言には、1年目から早稲田を引っ張っていこうという気概が感じられた。
「工藤はすごく強い。上級生と変わらない余裕度で練習をやっている。頼もしいですね」
今季臙脂のエースに成長した山口智規(2年)も、春先から好調の工藤の強さを認めていた。
前半戦の終わり頃には少し疲労も覗かせたが、夏合宿は「ほぼ100%できた」と言う。駅伝シーズンは即戦力として期待大。さらには、箱根駅伝での5区デビューもいよいよ現実味を帯びてきたかに思われた。
しかし、秋になり、難題に挑む前に、工藤自身が迷宮に入り込んでしまった。
さっそく出雲駅伝で大学三大駅伝デビューを果たすも4区10位と力を発揮できず、順位をキープするのが精一杯だった。