摂南大学での現在と、「揺るぎない目標」

　摂南大での指導はサークルに近い状況から出発した。

「1からチームを形成するのは初めての経験なので、やりながら考えていきたい」

　こう話すように、再び試行錯誤が始まった。2020年に完成したばかりの全天候トラックはあるものの、選手寮はなく、実績もない状況では勧誘もままならない、というのが正直なところだ。

「宝物を預かっても磨けないですから、まずは磨ける環境を整備することが僕の仕事ですかね」

　率直にこんなことを口にするところに、竹澤という男の誠実さがにじみ出ている。

　強化に時間がかかるのは重々覚悟している。その上で「あそこにいけば伸ばしてくれる」と思ってもらえる環境づくりを行うことが自身の使命だと今は考えている。

　ただ、そうは思いながらも、関東の大学で指導したいという思いも当然持っている。

「（関東の大学は）自分の競技レベルに近いでしょうし。いつかは自分以上の選手と、自分が見たことのない世界を見ることにチャレンジしてみたいという気持ちは当然持っています。それは揺るぎないものがありますね」

　いずれは指導者として箱根駅伝に挑み、世界で戦う選手を育成する竹澤が見られるかもしれない。それはいつになることか……。

「僕が今やるべきことは、まずは今いる選手たちとしっかり向き合うこと」

　選手時代にもそうだったように、1つ1つの目標を成し遂げていった先に、竹澤が思い描く未来が待っている。

＜第1回、第2回から続く＞

#1から読む

「竹澤はもうちょっと走れると思っていた」箱根駅伝での挫折、OBの厳しい声に涙…竹澤健介が“低迷にあえぐ早稲田大”の救世主になるまで