- #1
- #2
熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「初恋の女性と二度と会えない」号泣スアレス16歳が「噛みつき、W杯でゴール阻止ハンド」狂気のFWになるまで〈親友メッシと再タッグ〉
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byMike Ehrmann/Getty Images
posted2024/01/07 17:01
21世紀を代表するストライカーの1人と言っていいルイス・スアレス。ただし若き日の行動は世界中で物議を起こした
この報道を裏付けるように、8月、グレミオとの契約を今年末までに短縮。それでも、昨年、53試合に出場して26得点17アシストを記録した。ブラジルリーグのベスト11に選出され、グレミオのサポーターから惜しまれながらクラブを去った。
長年活躍してきたウルグアイ代表からは2022年W杯を最後に招集外が続いていたが、昨年11月に再び招集を受けた。
そして、12月22日、インテル・マイアミが彼の入団を発表。メッシ、元スペイン代表のMFセルヒオ・ブスケッツ、左SBジョルディ・アルバというかつてのバルセロナでのチームメイトと再び一緒にプレーすることになった。
これほど問題行動の多いストライカーも珍しい
2006年に19歳でオランダへ渡った際はほとんど無名の若手に過ぎなかったが、様々な困難に打ち勝ってステップアップを繰り返し、世界トップクラスのストライカーまで登り詰めた。その一方で、これほど問題行動が多く、毀誉褒貶が多い選手も珍しい。
2010年W杯の準々決勝ガーナ戦で、1-1の同点で迎えた延長後半の終了間際、セットプレーの流れから自軍ゴールの中に入り、ガーナ選手の決定的なシュートを両手でストップ。ガーナにPKが与えられ、スアレスは退場処分を受けた。もしチームが勝ち上がっても、次の試合は出場停止となり、自分はプレーできない。それを承知のうえで、咄嗟に手を出した。
はたして、ガーナ選手が蹴ったPKはクロスバーを叩いて外れ、ウルグアイは辛うじて敗戦を免れた。ロッカールームへの通路でこのキックを凝視していたスアレスは、ガッツポーズを繰り返した。試合は同点のまま終了し、PK戦でウルグアイが勝って準決勝へ勝ち上がった。
エブラとの確執など大騒動が連続
スアレスには、世界中のフットボール関係者とファンから厳しい批判が寄せられた。しかし、母国ウルグアイでは「神の手じゃない、スアレスの手だ」(注:1986年W杯の準々決勝イングランド戦でマラドーナが手を使ってゴールを決め、それを「神の手によるゴール」と表現したことに関連している)というチャントが作られ、「チームのため、国のために自らを犠牲にした男」と称賛されて国民的英雄となった。
そして、ここから彼の「噛みつき癖」が始まる。