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「圭汰が抜かれるなんて…」駒澤大の食堂は静まり返った「こんなこと今までなかった」監督&選手が証言する“最強軍団が青学大に完敗するまで”
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNaoya Sanuki
posted2024/01/05 06:00
3区で22秒差を詰めて、駒大・佐藤圭汰(右)の背後につき、追い抜こうとする青学大・太田蒼生。藤色の最強軍団はまさかの展開に言葉を失った
実際、1区ではそれがハマった。篠原がトップに立ち、そのまま鈴木に襷繋ぎをした時、篠原自身を含め、多くの選手が「2年連続3冠」が見えたという。だが、見えたことで徐々に別の感情に支配されていった。勝たないといけない、ここでさらに差を広げないといけないという焦りが生じたようだった。
エース・佐藤圭汰が抜かれた衝撃
さらに2区で鈴木が青学大の黒田朝日(2年)に詰められ、3区では10000mのU20日本記録27分28秒50を保持するエースが太田蒼生(3年)に並走され、揺さぶられて負けてしまった。その現実は佐藤の凄さを知る駒澤大の選手たちに大きな衝撃を与えた。実際、「圭汰が抜かれるなんて」と選手たちが集まる駒澤大の食堂はシーンと静まり返ったという。
「2区で黒田君に詰められても3区の圭汰のところで太田君を離してというのを想定していたんですが、離せなかった。その結果、4区の山川が追い掛ける展開になり、無理して股関節痛を再発させてしまった。ここは、もう負の連鎖でした」
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ただ、藤田監督は、「レースそのものは悪くなかった」と選手たちをかばった。
往路の設定タイムを上回っていた
佐藤は太田に競り負けたが、設定タイム通り走れなかったのかというと、決してそうではなかった。1区の設定は62分で、篠原は61分02秒、2区の設定は66分30秒で鈴木は66分20秒、3区は61分で佐藤は60分13秒だった。4区は61分で山川は62分32秒、5区は70分45秒で金子伊吹(4年)は70分44秒と、ほぼ設定通りに走っていた。往路区間の設定タイムは、5時間21分で、実際は5時間20分51秒の大会新記録、全員がほぼ設定通りに走っていた。
「圭汰は、山川が遅れた分をカバーしているので、全体的に狙い通りの走りができていたんです。でも、その上を青学に行かれました。さすがに5時間18分の往路記録は想像できなくて、監督としての経験値の少なさがすごく出てしまったかなと。復路も6区以外は、全員が5番以内で走っているので選手はよく頑張ってくれました」
設定通りに戦えたが、勝負には負けてしまった。
青学大に完敗した理由
なぜ、ここまで差がついてしまったのか。