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「申し訳ない…」青学大“走れなかったキャプテン”が泣いた日「志貴さんの言葉でひとつになれた」箱根駅伝1週間前の“涙のスピーチ”
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2024/01/03 21:30
青学大キャプテンの志貴勇斗(4年)。最後の箱根駅伝では16人の登録メンバーに入れなかった(写真は3年時の出雲駅伝で)
「自分たちの目標は箱根駅伝優勝です。でも、駒澤さんが強い。出雲、全日本でも完敗でしたし、駒澤さんは全日本のあと、11月に10000mで27分台を3人の選手が出したこともあり、本当に強いとみんなが思っていたはずです。あまりにも強い相手に勝たないといけないというプレッシャーは、たしかにあったと思います。監督の真意は、みんなに伝わったはずです」
原監督は、選手たちにホッとして欲しい割合は2割と言っていた。しかし、その言葉は学生に響いた。それだけ、青山学院の選手たちは勝ちたかったのだろうし、その分、重圧と向き合わなければならなかったのだろう。
“走れなかったキャプテン”の涙
いくぶん、雰囲気は和らいだのだろう。そしてそこから、おそらく2023年でもっとも大切なミーティングが行われようとしていた。
今季、青山学院の4年生の選手は10人いた。そのうち、16人の登録メンバーに入ったのは5人だった。そして学生ミーティングでは、メンバーに入れなかった4年生が一人ひとりスピーチをした。
そのなかには、キャプテンの志貴勇斗がいた。佐藤が言う。
「志貴は涙ぐみながら、『走ることで引っ張れなくて申し訳ない』と話していました」
志貴勇斗。2年生の時には箱根駅伝1区を区間5位と好走し、総合優勝に貢献。今季はキャプテンに選ばれた。
8区に登録されていた田中悠登(3年)は、志貴の言葉に心を動かされた。
「志貴さんの言葉を聞いて、みんなグッと気持ちがひとつになったというか、4年生のために頑張ろうという気持ちになったと思います。志貴さん、これまで苦しい時でもつらい表情は絶対に見せなかったので」
「信頼できない」と言われたこともあった
志貴はこの1年、頑張った。
前期の平均月間走行距離はトップテンに入り、夏の一次合宿での走り込みは700kmを超え、チーム2位の実績を残した。ただし、キャプテンとしての志貴は苦労を重ねた。志貴はいう。