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〈箱根駅伝の事件簿〉沿道の母から「もういいからやめなさい!」、「前日初めてTVで箱根を見た」コース間違いに「山の神」…歴史のウラ話
posted2023/12/31 17:02
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Shigeki Yamamoto
<名言1>
後先考えてる余裕はありませんでした。
(柏原竜二/Number968・969号 2018年12月20日発売)
◇解説◇
近年の箱根駅伝の人気を別次元に引き上げた立役者といえば、柏原だろう。
2009年1月2日、5区を任された柏原がタスキを受けた時、先頭の早稲田大とは4分58秒差がついていた。常識で考えれば逆転は不可能な差でも、恐ろしいほどのハイペースで他校のランナーをごぼう抜きした。
「前提として、コンディションを整えていくこと。まずは実際のコースと走りのイメージをすり合わせておくだけで良いと思います。あとは個人的には動きを変えないことも大事かなと。よく大平台のきついヘアピンカーブから動きを変える選手がいるんですけど、それってエネルギーをロスする部分も大きいと思います。ロスをしないでいれば最後のラストスパートが効くんです」
2021年、柏原は“5区攻略のコツ”をこのように話していたが――必死かつひたむきに今を駆け抜ける姿が、人々の心を打ったのは間違いない。
そこができないならば、駅伝も楽しめなくなるんですよ
4年連続5区を走り、区間賞を獲得した“山の神”は、卒業後に富士通に進み、マラソンに挑戦した。だが、左アキレス腱のケガと仙腸関節炎を患い、2017年3月に引退を決意した。東京オリンピックを3年後(当時)に控えた時期の引退は早すぎるのではないかとも言われた。
だが、五輪は引退を撤回する理由にはならないと言下に否定する。
「短い距離の駅伝なら走れたかもしれないですけど、最終到達地点は個人の競技。そこができないならば、駅伝も楽しめなくなるんですよ、きっと」
当時はアンチ一色だった印象があります
<名言2>
カアちゃんが「もういいからやめなさい」と叫んでいたのはわかりました。
(徳本一善/Number Do 2013 Winter 2012年12月20日発売)
◇解説◇
各校が箱根駅伝で優勝、シード権入りを目指すためにはスーパーエースの活躍が不可欠だ。しかし多大な重圧を受けることで、まさかの結末を味わったランナーは多い。法政大学時代の徳本は、その象徴だった。
2002年1月2日、往路の“花の2区”で悪夢が起きた。