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「お前みたいなサボりには向いてない、って(笑)」宝塚に憧れたバレエ少女が“ハードル次世代スター”になるまで…田中佑美(25歳)の転機
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph byL)Takuya Sugiyama、R)AFLO
posted2024/01/10 11:01
日本女子ハードル界の“ニューヒロイン”として注目を集める田中佑美
関大一高では2年時からインターハイ2連覇。世界ユース選手権やU20世界選手権にも出場した。ハードラーとしてのキャリアを駆け上がる一方、大好きな宝塚観劇に費やす時間は減っていく。18歳で迎える最後の宝塚受験の機会、田中は取り寄せた受験票を前に葛藤した。
「受験票を提出するまでに健康診断や写真撮影など色々な準備があったのですが、あまり積極的に動かなかったんです。代わりに母が動いてくれたのですが、迷っている私を見て『それくらいの気持ちならもうやめたら?』と。後日、家族会議を開いて、受験を諦めることにしました。
世界選手権が遠いものだからこそ簡単に『目標』って言えたように、宝塚受験もまだ現実味を帯びていなかったから『夢』だと言えていた。でも、実際に受験日が近づいて、いざ申し込みをするとなったときに、そこまでの覚悟があるのかという疑問符が消え去らなかったんです」
宝塚への“妄想”はいつしかなくなって…
結局、彼女は宝塚の受験票を提出することなく、ハードルでトップを目指す決意を固めた。かつて思い描いた夢を諦めることに未練はなかったのだろうか。
「芸名も色々考えていたんです。歴代のトップスターの方たちの名前を調べたら、天海祐希さんとか明日海りおさん、朝海ひかるさんのように『海』が入っていることが多いんですよ。なので、私も二文字目は『海』にしようとか(笑)。
長いこと言っていた夢ではあったので、その名残はありました。途中までは『もし受けていたら……』とひとりで妄想することもありましたが、気づいたらそれがなくなっていましたね。大人になったなって思います(笑)」
《かつて、宝塚歌劇団のトップスターを夢見た少女は、いまや日本女子ハードル界の次世代スターへと成長を遂げている。正しく、美しく、ハードルを越えてきた先に見えるものは。インタビュー最終回では、今季大躍進の田中が“12秒台までの道のり”を振り返り、理想のハードリングについて語る》