オリンピックPRESSBACK NUMBER
“女子ハードル界のニューヒロイン”田中佑美25歳が続ける成長…パリ五輪“代表争い”への本音「陸上のいいところは他人が関係ないことですから」
posted2024/01/10 11:02
世界選手権出場、アジア大会で3位に入るなど、昨年躍進を遂げたハードラー田中佑美
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by
L)AFLO、R)Takuya Sugiyama
女子100mハードルの新星・田中佑美（25歳）。2023年春、日本女子4人目の12秒台をマークし、ブダペスト世界選手権代表の座を射止めた。10月のアジア大会では中国選手のフライング騒動のなか、冷静な走りを貫いて銅メダルを獲得。この1年間で大きな躍進を遂げた。
高校・大学と各カテゴリでタイトルを手にしてきた田中だが、実業団では思うように結果がついてこないことに精神的なダメージを受けていた時期もあったという。そんな彼女が“12秒台までの道のり”を振り返るとともに、初出場の世界選手権で感じた世界との距離感、そしてパリ五輪にむけた理想のハードリングについて語った。《NumberWebインタビュー全3回の最終回》
高校・大学と各カテゴリでタイトルを手にしてきた田中だが、実業団では思うように結果がついてこないことに精神的なダメージを受けていた時期もあったという。そんな彼女が“12秒台までの道のり”を振り返るとともに、初出場の世界選手権で感じた世界との距離感、そしてパリ五輪にむけた理想のハードリングについて語った。《NumberWebインタビュー全3回の最終回》
◆◆◆
「もちろん出場を目指していましたが、予想よりトントン拍子に記録が上がって、気づいたら動く歩道に乗っていたというか……いつの間にかブダペストに到着していたという感じでしたね」
田中は初出場を遂げた世界選手権について、自身の表現でこう振り返る。
ADVERTISEMENT
昨年で一気にブレイクした印象のある彼女だが、高校・大学と世代トップのタイトルを手にして、着実に成長を重ねてきた。関大一高時代にインターハイを連覇すると、立命大では関西インカレ4連覇、3回生で日本インカレ優勝。『炎の体育会TV』（TBSテレビ系列）に出演するなど、学生のトップアスリートとして注目を集めてきた。
ハードル界の激動期のなかで
卒業後は富士通に所属。時を同じくして日本女子ハードル界は新たな次元に突入していた。2019年に寺田明日香が日本女子初の12秒台をマークすると、21年に青木益未、22年に福部真子もその壁を突破し、毎年日本記録が塗り替わるような激動期。
そんな中、田中は実業団1年目の21年はやや伸び悩んだものの、2年目の日本選手権は3位。自己記録も順調に伸ばし、決して低調だったわけではない。ただトップのレベルに伴って決勝進出ラインも上がり、予選・準決勝での敗退も増えていったという。
「やっぱり負ける体験、落ちる体験というのは精神的にくるものがありました。学生の頃は社会人の試合で負けたとしても、学生の試合では勝てたので、そこで精神的な均衡はとれていました。ただ、レースで予選落ちが続くと、やっぱり自信を失っていく面はありましたね」
