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「(抗議した中国選手を)責める雰囲気はなかった」アジア大会“あの不正スタート”レースを戦った田中佑美が明かす舞台裏「結局失格になったので…」
posted2024/01/10 11:00
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by
AFLO
この不正スタートを巡るドタバタ劇には様々な声が上がったが、レースを共にした田中はどう受け止めているのだろうか。繰り上げで銅メダルが決まったときの心境や、今回の対応に対する率直な思い、レース後の呉との意外なやり取りなど、知られざる舞台裏について聞いた。《NumberWebインタビュー全3回の初回/#2、#3に続く》
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女子100mハードルの決勝。ライトに照らされたトラックに立つ田中の表情は、緊張感より、これから始まるレースへの期待で和らいでいた。
「どの大会でも予選や準決勝は『通るかな』という不安が先に来るのですが、決勝に関しては楽しもうという気持ちが前面に出ていました。特にアジア大会は、プロジェクションマッピングとかで『自分かっこいい!』と気持ちを盛り上げてくれる雰囲気だったので、その流れに乗ってワクワクした気持ちでスタートラインに立っていました」
話題を集めた「フライング→まさかの再スタート」
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アクシデントが起きたのはその直後。優勝候補筆頭だった呉艶妮(中国)が、明らかなフライングを犯したのだ。号砲が鳴る前に動いた呉と、それにつられたジョティ・ヤラジ(インド)に対して、共に不正スタートによる失格が宣告された。
しかし、ヤラジが審判に抗議を始めると、フライング直後は自身の非を認めるように、観客にお詫びする仕草を見せていた呉もその抗議に加わった。長時間の猛抗議の末、ふたりとも不正スタートが取り消されて再スタートすることになる。
呉は今季大ブレイクした期待の新人。6月の中国の全国選手権で優勝を飾り、アジア大会の出場権を獲得。続く8月のFISUワールドユニバーシティゲームズで銀メダルを獲得し、12秒76の自己記録でパリ五輪代表の座を射止めた。そのルックスや派手なパフォーマンスも話題となり、中国では“ハードルの女神”と呼ばれる。
現場にいた田中は、騒動をどう感じていたのか?
開催国で絶大な人気を誇る呉を走らせるという異例の判断に、レースを見守る観衆の間に動揺が走ったが、田中はその場を冷静に俯瞰していた。
「彼女たちが走ろうが走るまいが、私個人のレースにはある意味、関係のないことなので『大変そうやなあ』という気持ちだけでした。あそこまで待たされることはなかなかありませんが、国内でもフライングや注意はよくあることなので、それと同じように対応しようと、次のスタートに向けて集中を高めていたと思います」