武豊を背に海外で勝利…“元主戦”として感じたこと

　ステイゴールドは、熊沢さんの手を離れた2000年の目黒記念で武豊を背に約2年8カ月ぶりの勝利を挙げ、翌01年、初の海外遠征となったドバイシーマクラシック（当時はG2）を勝ち、ラストランとなった香港ヴァーズでGI初制覇を果たした。

「あの馬がドバイや香港で勝ったときは、嬉しかったですね。ずっと苦楽をともにしてきた仲ですから。その背中に自分がいられたら一番いいなとは思いましたけど、素直に喜びました。ぼくが乗っていたときも、陣営とともに力を尽くして、あの馬のいいところを全部出せたとは思うのですが、最後に勝ったレースとかを見ると、ぼくの競馬の持って行き方がよくなかったかもしれない。あんなに切れる脚を使うと思っていなかったので、どのレースでもある程度先行したのが失敗だったかな、と。馬齢を重ねていくらか素直になって、GIでも前との差を詰めてはきましたけど、ドバイや香港で、何がマッチしたんですかね。遠いところに行っちゃった気がします。種牡馬として一大始祖というか神様のようになって、スピードだけではなくいろんなものを持ち合わせた馬をたくさん出しましたね」

ステイゴールドは武豊を背に香港ヴァーズで有終の美を飾った　©Getty Images

　互いに気持ちをぶつけ合いながら高め合った、特別な存在だった。

「携わることができただけでもありがたいと思っています。ステイゴールドの名前は、もう半世紀ぐらいは忘れられないんじゃないですか」

＜つづく＞