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「馬に乗ることが好きだからね」JRA“最年長”重賞制覇の柴田善臣(55)はなぜ勝ち続けられるのか? <蛯名正義との凱旋門賞秘話も>
posted2021/08/11 11:00
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Tomohiko Hayashi
8日、新潟競馬場でレパードS(GIII)が行われた。この3歳馬によるダートの重賞を制したのはメイショウムラクモ。管理する美浦・和田勇介調教師は調教師の中では比較的若い41歳。2018年に厩舎を開業したばかりで、4年目での嬉しい重賞初制覇となった。電話で話を伺うと、次のように喜びの弁を述べた。
「初めての重賞制覇は勿論、嬉しいです。メイショウムラクモは凄く難しい馬で、今回の勝利は善臣さんの力が大きかったです」
若き調教師に「善臣さん」と呼ばれたのはもちろんこの重賞で鞍上にいた柴田善臣騎手だ。指揮官が彼に手綱を任せた理由を改めて聞くと次のように続けた。
「ジョッキーは総じて調教だと速い時計になりがちだけど、善臣さんは注文通りに乗ってくれます。競馬へ行って速く走らせるだけでなく、馬乗りそのものが上手なんです。だから、難しい馬でも何事もなかったように普通に乗ってくれる。そんな技術を見込んで、メイショウムラクモの2戦目から依頼しました。今回の重賞制覇も当然、善臣さんがいてこその勝利でした」
「55歳0か月と10日」でJRA“最年長”重賞制覇
柴田善騎手はこれがJRA通算2万1559回目の騎乗。そして55歳0か月と10日での重賞制覇はJRA最年長記録。20年近く前に岡部幸雄元騎手が打ち立てた54歳0か月と31日を更新する最年長重賞制覇の記録となった。
柴田善臣騎手が生まれたのは1966年7月。実家は青森県の生産牧場だった。叔父である当時騎手をしていた柴田政人さん(元騎手、元調教師)や柴田政見さん(元騎手、元調教師)の活躍をテレビで観て育った。
小学生ですでに騎手を目指すようになった彼は、85年に競馬学校の第1期生として、美浦・中野隆良厩舎からデビュー。後にGⅠジョッキーとなり、冒頭で記したようにJRA最年長重賞勝利記録を作る彼だが、最初から目覚ましい活躍をしていたわけではない。当時は加賀武見元騎手(元調教師)や郷原洋行元騎手(後に調教師、故人)らベテランが元気な時代。更に叔父の柴田政人元騎手や岡部幸雄元騎手らがグングンと伸びて来た頃とあって、若い柴田善騎手は乗り鞍を確保するだけでも大変だった。
そんな中、88年には数少ないチャンスを逃さずモノにした。中山牝馬S(GIII)に出走を予定していたソウシンホウジュのハンデが50キロに決まると、同馬の主戦騎手では乗れない事が判明。柴田善騎手に白羽の矢が立つと、見事にこれを勝利。当時21歳で自身初の重賞制覇を飾ったのだ。