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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
《新潟BC入団決定》高い身体能力、絶妙なバットコントロール…それでも阪神・高山俊に足りなかったもの「ジャストミートまでは凄いが…」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byYuki Suenaga
posted2023/12/06 17:00
ヤクルトとの2球団競合の末、2015年のドラフト1位で明治大→阪神へ入団した高山俊も今季、戦力外に
高山選手のバッティングでスゴいと思ったのは、インパクトまで。スイング軌道が入っていけないコースがないほどの絶妙なバットコントロールで、抜群のジャストミート能力。そこまでは「凄い!」のだが、ジャストミートまでで、スイングをやめてしまっているように見えた。インパクト以降のもうひと押しがないから、びっくりするような飛距離や弾丸ライナーは見られなかった。
もちろん実際はそんなことはなかったのかもしれない。だが、あまりに高すぎる技術が、本来にじみ出るはずの「凄み」を消してしまっているように見えた。
「上手さ」は抜群。それでも高山に足りなかったものは…?
そして、久しぶりに現場で見た今日、鳴尾浜の高山俊選手も、そういうふうに見えた。いかにも彼らしく、“上手く”打ってみせた。
昨年の夏、自打球で右ひざのお皿を骨折していたせいもあったのかもしれない。バットのさばきが見事だった分、踏み込んだ右足に力強さが感じられないように見えた。
いつの時だったか忘れたが、明治大当時の高山選手をご指導された善波達也監督が、こんなことをおっしゃっていたのを思い出した。
「私、高山が学生野球でなんとかやっていけるぐらいのことは教えられたのかもしれないですけど、もしかしたら、それ以上のことは何も指導できてなかったのかもしれませんね……」
学生時代の高山選手のあれこれを思い起こすように、しみじみとした話され方だった。
プロ入り以降の「バットマン・高山俊」を構築するのは彼自身であり、その手助けをするのは、球団の指導者たちであろう。プロ8年間の努力……それが、必ずしも結果や栄光につながらないのも、「プロ」という世界のある種の「理不尽さ」なのかもしれない。
来季からは、イースタン・リーグに新規参入するオイシックス新潟アルビレックスBCに入団する。もう一度NPBの舞台に返り咲くことはできるだろうか。
(後編・北條史也編に続く)