- #1
- #2
JリーグPRESSBACK NUMBER
「期待してたけど駄目じゃん片野坂」「昇格する気ないのかよ!」J3での怒号…「完全に俺のミスだ」謝罪した監督が敗戦に後悔し、気づいたこと
text by
ひぐらしひなつHinatsu Higurashi
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2023/12/04 11:02
大分トリニータを率いた2017年の片野坂監督
「完全に俺の采配ミスだ。自分たちらしい戦いがまったく出来なかった」
選手たちは選手たちで失点して焦ってしまったことを「プロっぽくなかった」と省み、監督のせいではないと口々に言ってくれたが、常日頃から「トリニータらしいサッカーをしよう」と選手たちに言い続けているだけに、自らの選択がその「らしさ」を損なってしまったことに、後悔の念しか湧かなかった。
もしもあそこで自分が焦ってパワープレーなど選ばずに、これまでやってきたことを信じ丁寧にパスをつないで崩そうとしていれば、あるいはゴールをこじ開けることも出来ていたかもしれない。ただ選手の長身を頼みに無策にボールを放り込んだとて、それは偶発的な事故が起きることに期待しているようなものだ。実際、あの終盤にも、相手を追い込んでいる感触はまるで得られなかった。
はたから見ればそれも結果論で、実際にサッカーの現場ではそういう“事故”が試合を左右しているケースもままあるのだが、なにがなんでもJ2復帰を成し遂げなくてはならない現在、そんな不確定なものを頼っている余裕など、あってはならない。
最後まで強固にブレなかったものとは
この一戦の経験を境に、片野坂の采配は緻密さを増した。もともとロジカルな指揮官は大味なゲームを好まないところがあったが、試合の流れの傾き具合やそこで生じている相手とのパワーバランス、そして攻守の比重などに、ますます細やかに神経を行き渡らせるようになった。
その後、片野坂の築いた独特のサッカースタイルは多彩な変遷をたどって完成形を目指すことになるが、最後まで強固にブレなかったのは、この「バランス」へのこだわりだったかもしれない。
<前編から続く>