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JリーグPRESSBACK NUMBER
「期待してたけど駄目じゃん片野坂」「昇格する気ないのかよ!」J3での怒号…「完全に俺のミスだ」謝罪した監督が敗戦に後悔し、気づいたこと
text by
ひぐらしひなつHinatsu Higurashi
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2023/12/04 11:02
大分トリニータを率いた2017年の片野坂監督
これまでJ1で指導してきた選手たちとJ3の選手たちとの間には、基礎技術やプレー強度や判断力といったクオリティー面でのギャップも感じた。だが、片野坂はそのスペックを比べることはせず、個々を鍛えてレベルアップさせながら、あくまでも手持ちの戦力でいかに勝つかだけを考え続けた。
開幕前にはぶっちぎりの優勝候補とみなされていたが、一時は10位にまで順位を落とし、1年でのJ2復帰目標に暗雲が立ち込めた。ほぼ時を同じくしてライバルの栃木は一気に調子を上げると夏場に10連勝。しかもその10勝目が第19節のトリニータ戦で、スコアレスドローで終わりそうだった90+5分にセットプレーから挙げた1点で勝点のすべてを持ち去った試合だったのだから、トリニータにとってはなんとも屈辱的な話だ。
「なんだよ。期待してたけど駄目じゃん片野坂」
その精神的ダメージもさることながら、リーグ戦残り11試合にして首位を独走する栃木に勝点9差と離されたことが、痛恨の極みだった。試合数の少ないJ3では一試合ごとの勝点の重みもそのぶん大きい。
「なんだよ。期待してたけど駄目じゃん片野坂」
「監督じゃなくてコーチとして有能なだけだったってことじゃね?」
一部のサポーターたちの間ではじわじわと疑念の声が上がりはじめた。
「さっさと見切りをつけて違う監督を連れてこないと1年でJ2復帰できなくなる」
そんなことを言われる状況までに、新人指揮官は追い詰められていた。
手堅く勝点を拾う戦法が功を奏して…
上のカテゴリーでも戦える力を十分に養った上でJ2に昇格させたいというのが片野坂の考えで、クラブからの求めでもあった。だが、自らの思い描くスタイルの完成度が高まる前にJ2復帰に黄信号が灯りそうな状況に陥り、指揮官は決断を迫られる。
なによりもいま優先しなくてはならないのは、1年でJ2に復帰することだ。自分の理想を追い求めるのは、それを達成してからでも遅くない。
栃木に敗れた次の試合、第20節の福島ユナイテッドFC戦から、片野坂は起用選手を入れ替えて守備を強化した。リスクを負う割合を低くし、泥臭くとも手堅く勝点を拾える戦法へとシフトする。