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カタールの悪夢を振り払い、佐々木歩夢がMoto3最終戦で正々堂々の今季初勝利! 加藤大治郎の日章旗とウイニングランで来季はMoto2へ
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2023/11/29 11:03
ウイニングランの途中、両親と抱き合って喜ぶ佐々木歩夢。渡された日章旗は22年前に加藤大治郎が使ったもの
戦いを終えた歩夢は、こう語る。
「バレンシアは勝つのが難しいサーキット。とにかく位置取りが難しく、最終コーナーが勝負どころになるし、最終ラップに前にいないと勝てない。だけど、レース後半になって前を走っていたコリンがミスをして自分が前に出ることになった。それから最終ラップまで前を走ることになったけれど、集中できたし、こうして優勝することが出来てうれしい。
今日は自分の最大限の力が出せたと思う。カタールGPの後はみんなが背中を押してくれたし、その期待に応えられた。先週のカタールは本当につらかった。だから、今回は絶対に勝とうと思って自分にプレッシャーをかけた。このチームで最後のレースで優勝できたこともあって、チェッカーを受けたときには涙が出た。このチームでいろんなことを学べた。レースは個人戦だと思っていたけど、そうじゃないんだということを知った。Moto3で最後のレースとなったけど、これがベストレースですね」
今季は最終戦の今季初優勝を含む11回の表彰台に立ち、マシアとは6点差の総合2位だった。Moto3クラスにフル参戦して7年目。124レースを戦って優勝3回を含む表彰台獲得22回、PP8回、ファステストラップ8回という記録を残した。
グランプリ8シーズン目のステップアップ
来季の歩夢は「ヤマハVR46マスターキャンプ」からMoto2クラスに参戦する。最終戦が終わった翌日には、「優勝の喜びを味わう時間もなかった」と初テストに挑んだ。3時間の走行だったが、ニューチャレンジを存分に楽しんだ。
「楽しかった。初めてのバイクに初めてのタイヤで、最後の走行セッションではトップから2.3秒落ちだった。2秒落ちくらいまでは行きたいなと思っていたから、ほぼ予想していた通り。Moto2はMoto3より60〜70キロは最高速が速い。だから、パワーがどうのこうのより、速い分、止めるのが難しかった」
たった1日のテストが終わり、来年2月までグランプリはシーズンオフに突入する。歩夢はこの冬、ヨーロッパの暖かいサーキットで「武者修行の旅に出る」と笑う。大きいバイクに慣れるため、ヤマハが用意する市販バイクでポルトガルやスペインで徹底的に走り込む予定である。