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“降格濃厚”横浜FCの選手は崩れ落ち…「残酷な裏天王山」でJ1残留を決めた勝者・湘南ベルマーレの猛省「毎年同じことを繰り返していたら…」
posted2023/11/27 17:01
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Etsuo Hara/Getty Images
今年もまた、J1にサバイブした。
J1リーグ17位の湘南ベルマーレと18位の横浜FCが、11月25日に激突した。この試合を含めて残り2試合の時点で、湘南は勝点31、横浜FCは勝点29である。今シーズンのJ1は最下位のみがJ2へ降格することになっており、湘南が勝てばJ1残留が決まり、横浜FCが勝利すると立場が逆転する。両チームにとって運命の一戦である。
雄叫びと落胆の残酷なコントラスト
勝ちたいが、負けたくもない。
先制したいが、されたくもない。
大胆さよりも手堅さが先行するような試合で、湘南は前半だけで7本のシュートを浴びた。アウェイのスタジアムをホームのような雰囲気に染め上げたサポーターが、思わず悲鳴を上げるような場面もあった。しかし、横浜FCのシュートミスに助けられ、スコアレスで折り返すことができた。
後半開始早々にもピンチを迎える。ペナルティエリア内からフリーでシュートを許すが、韓国代表の活動から戻ってきたGKソン・ボムグンが弾き出す。
その直後だった。左ショートコーナーからMF池田昌生が右足ミドルで狙うと、相手GKがセーブする。セカンドボールに反応したDF大岩一貴が、右足で冷静にプッシュした。VARによる少し長いオフサイドチェックを経て、後半開始早々の49分に湘南が先制した。
オープンプレーではなかなかフィニッシュへ持ち込めなかった湘南だが、デザインされたセットプレーで横浜FCのゴールをこじ開けた。大岩だけでなくCBキム・ミンテとFW大橋祐紀も、セカンドボールをプッシュできるポジションにいた。
このワンプレーに、この一瞬に懸ける湘南の集中力が、横浜FCを上回ったと言っていい。CKのキッカーを務めるMF阿部浩之は、「最近ずっと練習している形で、臨機応変に崩せました」と振り返った。
このまま1対0で試合を終わらせれば、湘南は残留を決めることができる。ただ、守備に重心を置くにはまだ早い。戦い方を大きく変えることなく時計の針を進め、終盤は相手のパワープレーをキム・ミンテ、大野和成、それに大岩の3バックを中心にことごとく跳ね返した。制空権は試合を通して掌握した。
肌を刺すような寒さに包まれたスタジアムに、試合終了のホイッスルが鳴り響く。ハマブルーと呼ばれる水色のユニフォームが、力を失って崩れ落ちる。アウェイ用のライトゴールドのユニフォームに身を包んだ選手たちは、拳を突き上げて雄叫びをあげた。歓喜の輪が広がっていく。湘南はJ1残留を決めた。