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「東大野球部エリートはサラリーマンになっても優秀か?」平均年収1500万円超、就職人気企業へ…東大野球部→三菱商事→ローソンストア100社長のスゴい人生
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph bySankei Shimbun
posted2023/11/26 17:26
写真はこの秋の東大野球部。法大戦で、東京六大学リーグ2季ぶりとなる白星をあげ、マウンドで喜ぶ松岡由機投手(4年)
かくして情報産業グループの一員となった佐藤は、2000年12月、サービスを開始したばかりのイーマイルネットに出向する。同社は三菱商事と日本航空(JAL)が折半出資しており、800万会員を抱えるJALのマイレージバンクを利用し、eビジネス事業を展開することを目指していた。
「当時、三菱商事は新設のグループでローソンなどの消費者対面事業への参画を進めていました。その頃の小売業界はいわゆる『勘』で運営されている部分が大きかったのですが、ITを活用したデータに基づくマーケティングサービスの確立を志向していました」
ところが、2001年のアメリカ同時多発テロなどの影響によりパートナーの経営環境も変わり、この合弁事業も継続が困難な状況に。結局、佐藤は2002年に三菱商事に戻ることになる。
「その頃の私はまだ入社4年目程度でしたので、すぐに三菱商事に戻されましたが、先輩の一人はこのプロジェクトの三菱商事側のリーダーとして副社長に就いていましたから、合弁を解消することになり非常に悔しがっておられたことを今でも覚えています。実は先輩は、その後三菱商事に戻られてから再びポイント事業を立ち上げ、それが今や誰もが知る国内最大級のサービスに成長しています。三菱商事の先輩として、大変尊敬しています」
投資撤退で「悔しい思いをしたことも」
事業会社で「消費者事業」の面白さに目覚めた佐藤は、ここで初めて「小売サービス事業」に自らの道を定めた。
「消費者の激しい変化に対応していくスピード感、そしてお客様との信頼を築き上げることで商売として成立し、その小さな利益の積み上げが大きなビジネスになるダイナミズム。それまでボンヤリしていた自分の将来像がハッキリ見えたのもこの頃でした」
日本の小売サービス業は中小規模事業者が多い。事業を理解するためには中小企業の本質的な課題を知る必要があると考えた佐藤は、一念発起して中小企業診断士の資格を取得した。
「三菱商事に戻ってから、マーケティング関連のベンチャー企業投資の仕事をしていました。事業を成長させてIPO(新規公開株式)された会社もあれば、成長できずに私としても大変悔しい思いをして投資を引き上げることとなった会社など色々でした。しかし、ベンチャー企業の経営陣の皆さんと対話するうえで、企業経営のフレームワークを学んでいたことが仕事にも生かせました」
44歳でローソンストア100の社長に
こう佐藤が話すように、この頃から「経営」に対する興味も湧き始めていた。