「いえ、全く（笑）。ラファエラもそうだし、柔道を習うことを勧めた父だって何も知らなかった。ただ、家の近くに柔道の練習場ができて、無料で指導してもらえるというので通っただけ。ラファエラもそうだけど私も喧嘩ばかりしていたので、『柔道をしたらもっと喧嘩が強くなれる』と思ったの（笑）」

――それじゃあ、お父さんの意図と真逆じゃないですか（笑）。でも、すぐに柔道がどんなスポーツなのか理解できましたか？

「そうね。柔道は他のスポーツよりも礼儀、他者への敬意などを重んじることを理解したの。『これは素晴らしい』と思ったので、熱心に練習しました」

最初はセンセイが注意しても全く聞かなかったが

――ラファエラもそうだったのですか？

「それが、彼女は練習でもふざけてばかり。センセイ（注：ブラジルでは、柔道の指導者のことを日本語でこう呼ぶ）や私が注意しても、全く聞かなかった」

――あなたはすぐに上達して強くなったわけですが、故障に苦しんだり、15歳で妊娠してしまったりと、キャリアにかなりのブランクができたと聞きました」

「そうね。そういった点では苦労したわ。でも、出産後、すぐに練習を再開し、奨学金をもらって高校を卒業。やはり奨学金で大学で体育学を専攻しながら柔道を続け、大学院で勉強しながら2012年と2016年の五輪出場を目指した。でも、それが叶わず、2018年に現役を引退。以来、指導者の道を歩んでいます」

――素晴らしいですね。貧民街で生まれながら、柔道で奨学金を得て大学院まで終え、現役引退後も柔道の指導者として働いているとは……。あなたにとって、柔道とは何ですか？

「大好きなスポーツであり、私の人生を一変させてくれたかけがえのないもの。このような素晴らしいスポーツを発明してくれた日本と日本の人たちに心から感謝しています」

　姉ラケルさんに先に話を聞いたことで、ラファエルのことがわかってきた。

最初は「ふざけるために練習に行っていたの」

　練習後、少し待たせたことを詫びてからリオ五輪金メダリストに話を聞いた。このインタビューの直前（10月末）にチリで行なわれたパン・アメリカン大会で優勝したばかりだった。

パン・アメリカン大会で優勝したラファエラ・シルバ　©AFP/JIJI PRESS

――パン・アメリカン大会優勝、おめでとうございます。

「ありがとう」

――姉のラケルさんから、あなたの少女時代のことを聞きました。相当な問題児だったようですね？

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