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「最初はケンカが強くなれると(笑)」問題児を変えた日本人女性コーチ「ユーコの親身な指導が…」ブラジル女性金メダリスト柔道家の感謝
posted2023/11/25 18:31
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
AFP/JIJI PRESS
2016年のリオ五輪でブラジルの国民的ヒロインとなったのが、柔道女子57kg級で優勝したラファエラ・シウバだ。
ブラジル映画「シダージ・デ・デウス」(日本公開タイトル「シティ・オブ・ゴッド」2002年制作。リオの貧民街にいるギャングの抗争を描き、世界的にヒットした)の舞台となったリオ有数の危険な地域で生まれ育ち、2000年、8歳のとき、11歳の姉ラケルと共に近所の柔道教室に通い始めた(3年後、これが貧困家庭の子供たちに柔道を通して教育を施すNGOインスチトゥート・レアソン=以下、レアソンとなる)。
2人は気性が荒く、当時、ストリートなどで男の子たちと喧嘩ばかりしていたため、父親が「喧嘩をする時間をなくすために柔道を習わせた」そうだ。
藤井さんたちとの練習はどんな感じ?
柔道の稽古を通して礼儀、他人を敬うことなどを教わり、姉妹はブラジル代表入り。ラケルは五輪出場の夢は叶わなかったが、ラファエラは藤井裕子さんからレアソンで、そしてブラジル代表でも指導を受けて大成した。
現在は、ラケルは現役を引退してレアソンのコーチ。ラファエラは2021年にレアソンを退団してフラメンゴ(注:名門フットボール・クラブだが、柔道など五輪種目もある)の契約選手となっているが、クラブの垣根を越えてレアソンのコーチである藤井裕子さんとラケルから個人指導を受けている。
リオ五輪の柔道競技とレスリング競技のために建設された「アレーナ・カリオカ2」で行われたその指導を、見学させてもらった。
ラファエラは、この前にフィジカル・トレーニングを2時間もやってきたそうだが、技術練習は非常に楽しそうだ。裕子さん、ラケル、2人の練習パートナーらと軽口を叩きながら、次々と技の稽古をする。時折、裕子さんとラケルがアドバイスを送る。
姉いわく「柔道をしたらもっと喧嘩が強くなれる(笑)」
約1時間の練習後、まず姉のラケルに話を聞いた。
現在、34歳。ラファエラより1つ下の階級の52kg級で、2013年と2014年の南米チャンピオン。2016年のヨーロピアン・オープンでも準優勝したが、五輪のブラジル代表には手が届かなかった。
――11歳で柔道を始めた当時、どんなスポーツか知っていたのですか?