ただ、その後に待っていたのは悔しい想いの方だった。クライマックスシリーズファイナルステージ初戦。ファーストステージを突破した勢いそのままに大阪に乗り込んだが初戦で出鼻をくじかれた。初回に絶対的エースの山本由伸から3点を奪う最高のスタートも、4回に3失点で同点。6回に再び1点のリードをつかむも、その裏に4失点。試合は決した。8回に代打が送られた。

松川が悔やむ「あの1球」

「勝てる試合。勝たないといけない試合を落とした。悔しいどころじゃすまない試合」と松川は歯噛みする。悔やまれるのは3回、2死走者なしからの1番中川圭太に死球を与えた場面。次打者の西野真弘はなんとか抑えて切り抜けたが、続く4回に紅林弘太郎に二塁打を浴びるなど3点を失ってしまった。

「あのデッドボールからインコースに行きづらくなってしまった。それは自分の甘さ。攻めるべきでした。反省材料だらけ。この悔しさ、反省を忘れないようにしないといけない」

　そう話し、天を仰いだ。試合後はホテルの自室テレビでスポーツニュースを見入った。解説者たちの声に耳を傾け、どうすべきだったかを何度も考え、反芻した。忘れてはいけない記憶である。

CSファイナルでオリックスに敗れて日本シリーズ進出を果たせず、ファンに挨拶する吉井監督（中央）らロッテの選手たち　©JIJI PRESS

　2023年シーズンはかくして終わりを迎えた。そして、もう2024年への本格的な準備は始まっている。松川はこの一年をしっかりと思い返しながら汗を流す。飛躍の年とはいかなかったが、将来、大きく羽ばたくために必要な時間が今年、確かにあった。

「このオフは悔しさを忘れずに取り組みたいです。打撃はもっともっとレベルアップしたいですし、課題のスローイングもしっかりと安定して投げられるようにしていきたい。もっと相手から嫌がられるキャッチャーにならないといけない。課題は多いですけど、どんどん磨いて成長をしていきたい。来年は飛躍の一年としたいです」

　11月16日、ZOZOマリンスタジアムでの秋季練習最終日。秋晴れの空の下、松川はそう言って笑顔を見せた。久々の松川スマイルだった。充実した表情からは、なにかを掴んだようにも見えた。3年目の来年は正捕手獲りに挑む。