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野村克也が岡田彰布に苦言「ワシの話を聞けんのか」阪神時代“じつは不人気だった”ボヤキ…2人の確執説には続きがあった「岡田はえらいな」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byJIJI PRESS
posted2023/11/03 11:02
野村克也と岡田彰布は不仲だったのか? 25年スコアラーとして阪神を支えた人物が明かした
〈普通なら、一軍の監督の顔色をうかがって『お前、バントを人一倍練習しておけよ』というのが建前としての仕事でしょ。岡田さんはそうじゃない。それが本音ということなんです〉(※8)
阪神最終年…野村がポツリ「岡田はえらいな」
今岡は一軍に復帰するも、7月31日に再び登録抹消に。二軍には打撃投手が少なく、岡田は炎天下で若手打者に毎日600球近くのボールを放っていた。愚直な姿勢は今岡の心を動かした。
「岡田は二軍の試合が終わったら、ピッチャーやバッターの寸評を書いて、毎日野村さんにFAXを送ってたのよ。何をテーマに臨んで、何ができて、何ができなかったのかを事細かにレポートしていた。野村さんは最後の年、『岡田えらいな。的確な資料を送ってくれる』とコーチ会議の時に褒めていた。岡田も野村さんに嫌われていると肌で感じていたと思うよ。でも、腐らずに自分の仕事をちゃんと遂行していた。それが岡田なんよ」
地道に役割を全うした岡田は野村の後を受け継いだ星野仙一のもとで二軍監督、一軍内野守備走塁コーチを務め、04年から監督に就任した。翌年、今岡は「5番・サード」でプロ野球史上歴代3位の147打点を挙げて優勝に貢献。そして、18年ぶりの歓喜に沸いた今年、リーグ1位の555得点の攻撃陣をサポートしたのも今岡真訪打撃コーチだった。
「今年、岡田監督の指揮で阪神は優勝できたと思う。ただ、監督の考えを理解して、選手とのパイプ役になったコーチ陣の存在も大きかった。(3年連続Bクラスに終わった)オリックスの監督時代には、それが欠けていたんよ」
阪神時代の野村は、おなじみの“本音コメント”がチームに不協和音をもたらすこともあった。だがこうも言える。あのボヤキが、岡田と今岡の師弟関係を生み、20年以上先のドラマの伏線になった。人生、何が功を奏するかは死ぬまでわからない――。
※1 98年11月26日付/スポーツニッポン
※2 99年1月22日付/スポーツ報知 一連の野村、岡田の発言
※3 99年4月8日付/日刊スポーツ
※4 99年5月5日付/スポーツニッポン
※5 99年6月22日付/読売新聞大阪版 「ノムさん語録」で5月4日の発言を紹介
※6 99年5月5日付/スポーツニッポン
※7 22年7月号/ベースボールマガジン を参照して作成
※8 22年7月号/ベースボールマガジン