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野村克也が岡田彰布に苦言「ワシの話を聞けんのか」阪神時代“じつは不人気だった”ボヤキ…2人の確執説には続きがあった「岡田はえらいな」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byJIJI PRESS
posted2023/11/03 11:02
野村克也と岡田彰布は不仲だったのか? 25年スコアラーとして阪神を支えた人物が明かした
「最初の頃は、野村さんも褒めていたけど、1年目の途中から『非難』の段階に入ったのよ。失敗した選手に『親の顔が見たい』とまでコメントした。阪神だから、大きく報じられるわけよ。『もう野球をしたくない』という選手も出てきた」
ボヤキが独り歩きした顕著な例がある。5月4日、甲子園での巨人戦が中止になった後、野村は今岡についてこう述べている。前者は『スポーツニッポン』、後者は『読売新聞大阪版』である。
〈あの子には心の教育が必要や。ショートという1番大事なところを守っていて“捕れないから追わない”では困る。打っても内野ゴロだと“あきません”で走らんのや〉(※4)
〈今岡を見ていると、粘っこさがない。僕打てません、という感じ。でもなあ、オレの現役時代とよく似ているんや。オレも二軍時代な、やる気があるのか、とよく殴られた。動きがのそのそだったからな。今岡はオレと同型だな〉(※5)
どちらも野村のコメントに違いないが、後者を読めば愛情を持っていたと読み取れる。しかし、大々的に報じられるのは“ボヤキ”だった。野村の小言を報道陣から伝えられた今岡は〈もういいじゃないですか〉(※6)とうんざりしていた。
マスコミを通して選手を発奮させる野村の作戦は、阪神では逆効果になっていた。
迷う今岡に岡田は言った
“口撃”に滅入っていた今岡は2000年、開幕から精彩を欠いた。6月2日の広島戦、1点差の9回裏無死一塁の好機をバント併殺打で潰してしまう。すると翌日、田中秀太と入れ替わりで登録抹消になった。鳴尾浜球場で気落ちしながらバント練習を始めると、岡田二軍監督が声を掛けた。
〈お前は、バント要員やない。バットでレギュラーを獲るんや。そこは間違えるなよ。ただし、バントの練習はいらないというわけやないで〉(※7)
今岡は嘘をつかず、本音で接する岡田に心を動かされた。