「第2戦の出場に向けて、少しでも出場の可能性を高くするために、あの時間帯にドクターの判断で交代しました」

　試合翌日、ドクターから直接、励まされたという。

「心が折れると、ケガもそのまま悪くなる。心だけは折れてはいけないぞ」

　ありがたい言葉ではあったが、心配は無用だった。早川も第2戦の出場をあきらめるつもりなど、さらさらなかった。

「次は絶対に自分がチームのために戦うんだ、何が何でも出てやるぞ、と思っていました。だから、ドクターにも『心は大丈夫です』と返しました」

「MVPですかね？　すべてかっさらいたい」

　1点ビハインドで迎えた第2戦。メディカルスタッフの尽力もあり、先発メンバーに名を連ねると、ピッチで躍動する。60分過ぎにはPKを誘発するプレーで先制点を呼び込んだ。ゴールが入った瞬間、もう負ける気はしなかった。72分に途中交代したものの、ベンチで逆転勝利を確信。それでも、早川は試合終了の笛を聞くと、ほっと胸をなで下ろしていた。

「大会規定の『U-21枠』として僕が出ていたので、プレッシャーもありました」

　次の舞台は国立競技場でのファイナル。2016年以来となる大会制覇に向けて、チームの勝利を最優先に考えつつも、どん欲な姿勢で臨むことを誓う。

「レッズのタイトルを一つでも増やすために、ゴールを取りたいし、アシストもしたい。そこまでいけば、MVPですかね？　取れるものなら、すべてかっさらいたいです」

　今夏、ベルギーのシント・トロイデンに期限付き移籍したアカデミーの先輩である鈴木が残した最後の言葉は、いまも胸に留めている。

「次はお前の番だぞ」

　ニューヒーローの『出世物語』は、浦和に脈々と受け継がれてきたもの。11月4日の大一番は、その大きな飛躍のきっかけにするつもりだ。