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「MVPですかね? すべて、かっさらいたい」浦和レッズ・早川隼平17歳の野望《ルヴァンカップ・ニューヒーロー賞を最年少で受賞!》
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/11/02 06:00
ルヴァンカップ・ニューヒーロー賞を最年少記録となる17歳11カ月で受賞した浦和レッズの早川隼平
「『うまくやろう』と思わなくてもいい。とにかく走って戦う」
ジュニアユースからユースに上がる頃、昇格を一時保留されたことでプレースタイルを転換したという。周囲を生かすパサーだった中学生の早川は、がむしゃらにハードワークすることで殻を破り、自ら道を切り拓いた。
「僕に何か飛び抜けたものがあるかと言えば、何もない。よく言えばオールラウンダーですが、すべての能力値を上げていかないと、本物のオールラウンダーとは言えません」
トップチームのデビュー戦でもひたむきに「自分からアクションを起こすこと」を意識。163cmのハードワーカーは積極的に相手最終ラインの裏へ走り、好機を生み出した。
サッカーを仕事にする難しさを痛感
そして、その2週間後、ルヴァンカップの湘南ベルマーレ戦では初先発のチャンスをつかんだ。自分では気づいていなかったが、ウォーミングアップの段階から気負っていた。ユース時代に指導を受けていた池田伸康コーチから「動けていないよ。もっと動け、動け」と指摘されて、ようやく体が軽くなった。
「あれで緊張が和らぎ、試合にもスムーズに入れました。ノブさん(池田コーチ)のことは信頼しているので、素直に意見を聞き入れて、すぐに行動に移しました」
1点を追いかける43分には同点ゴールをマークし、Jリーグ公式戦のクラブ最年少得点記録を更新(17歳4カ月14日)。チームにとっても貴重な勝ち点1をもたらし、グループステージ突破に大きく貢献した。
トップチームで第一歩を踏み出した川崎F戦と湘南戦は、今でも立ち返る場所になっている。夏に1度調子を落としたときには、サッカーを仕事にする難しさを痛感。「楽しむだけではダメだ」と思い直し、ルヴァンカップの2試合を頭に浮かべて、自らを見つめ直した。
「あのときとは何が違うのかって。最初の勢いがあった頃を思い出し、なぜあのようなプレーができたのかを考えました。サッカーの記憶力だけはいいので」
ドクターに励まされるも「心は大丈夫です」
勢いを取り戻したのは、その後である。ルヴァンカップ準々決勝のガンバ大阪戦は2試合連続で先発出場し、マチェイ スコルジャ監督も納得するプレーを披露。そして、準決勝の横浜F・マリノス戦ではプロ魂を見せた。第1戦に接触プレーで左足首を負傷し、担架に乗せられ、前半18分で途中交代。顔をしかめて、ピッチに倒れ込む姿を見た多くの人は、さすがに4日後に控えた第2戦の出場は難しいと思ったはず。ただ、メディカルスタッフの見解は違ったようだ。