「常廣がいたから、ここまで頑張ってこられたと思っています。常廣に負けたくないと思って練習しましたし、自分が苦しいときに支えられたこともありました。もし対戦する機会があれば、そういった思いをぶつけたい」

　一方、最速155キロのストレートと鋭いフォークで三振を量産する“右の本格派”として今ドラフトの目玉になった常廣にとっても、下村は「ずっと目標にしてきた存在」だったという。

「自分にとって、ずっとライバルでした。（負けたくないという気持ちは）下村と同じ思いです」

会見で互いへのリスペクトを口にした下村海翔と常廣羽也斗　©Shigeki Yamamoto

　ある記者からは「お互いのいいところ、好きなところは？」といった質問も飛んだ。すぐ隣にいる相手と褒め合うのはさすがに面映ゆいのでは……というこちらの心配をよそに、常廣は笑顔でこう答えている。

「下村のいいところは、野球に対して一途で、負けず嫌いで……普段はニコニコしているところが好きです」

　野球部員たちの笑い声が響くなか、照れくさそうにしていた下村も負けじと“応戦”する。

「常廣の好きなところは……面白いところです」

　アスリートとして「負けたくない」と健全な対抗心を燃やしながらも、仲の良さを隠そうとはしない。彼らが大学で過ごした時間の濃密さを、あらためて目にした思いだった。

指名球団の帽子を被って記念撮影に応じる下村海翔と常廣羽也斗　©Shigeki Yamamoto

「選択終了」の球団も…不安を募らせる中島大輔

　18時40分、新高輪で豪快に常廣を引き当てたばかりの新井監督が、青山キャンパスの会見場に向かっているというアナウンスがあった。常廣と下村はすでに記者会見を終え、ドラフト会議も5巡目に差しかかろうとしていた。しかし、「中島大輔」の名前はまだ読み上げられていない。

　その10分ほど前、青学OBの内野手・泉口友汰（NTT西日本）が4位で巨人に指名された瞬間には、中継を見つめる野球部員から「うおおお！」と歓声が上がっていた。もちろん中島も先輩の指名を喜んでいたものの、「もうそろそろ……」という思いは強くなっているはずだ。

　中島は5巡目でも指名されなかった。6巡目からは選択終了とする球団も出てくるだろう。頭をよぎる「指名漏れ」の4文字――青学と学生日本代表を牽引した明朗なキャプテンの表情も、さすがに不安の色が濃くなっていった。

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