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プロ野球PRESSBACK NUMBER
青学大ドラフトに密着「指名漏れか」“残されたキャプテン”は不安げな表情…突然の《楽天6位指名》に広島・新井監督が興奮「中島くんっ!」
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byShigeki Yamamoto
posted2023/10/30 11:05
楽天から6位指名を受けた青山学院大学キャプテンの中島大輔。指名の瞬間、偶然その場に居合わせた広島・新井貴浩監督から熱いエールを受けた
歓喜の直後、“デカすぎる男”新井貴浩が見せた神対応
「常廣くん、180センチだよね? 新井さん、デカすぎませんか……」
スーツ姿の新井監督(189センチ)が壇上に現れ、常廣との2ショットに収まると、周囲からそんな声が聞こえた。身長差以上に、体の厚みや身にまとうオーラが“デカさ”を感じさせるのだろう。
新井監督はカープの帽子を常廣にかぶせる前に、「髪型、大丈夫?」とさりげない気遣いを見せた。対面した感想を問われて「すごくカッコいいです……!」と答えた常廣の言葉に、思わず「わかります」と頷きたくなってしまった。
そんな時だった。取材対応中の新井監督と常廣を囲む報道陣の後方から、「うわああああ!」という爆発的な歓声が響いた。常廣を抽選で外した楽天が、6位で中島を指名したのだ。
取材を遮られる形になった新井監督も、尋常ならざる歓喜の声と拍手に状況を察したのだろう。マイクを握ると、「中島くん、中島くんっ!」と呼びかける。
「楽天入団、おめでとう!」
声の“張り”が凄まじい。プロ野球の監督が他球団のドラフト指名選手にここまで熱烈な祝福を贈ったことが、かつてあっただろうか。偶然が生んだサプライズに、会見場の熱気は最高潮に達した。
「中島くん、頑張ってね! またオープン戦とか、交流戦でお会いしましょう」
「タイミングを待っていた、ということで(笑)」
その後、急ぎ用意された記者会見で、中島は苦笑しながら「ホッとしました。正直、不安のほうが大きくなっていました」と本音を吐露した。また、新井監督の粋なエールについてはこう答えている。
「すごく嬉しかったです。(6巡目指名は)そのタイミングを待っていた、ということで(笑)」
会見場で隣り合った「青山スポーツ」の学生記者も、キャプテン中島の指名に「よかったぁ……」と感慨を口にしていた。
「最後はもう心配で、心配で……本当に嬉しいです」
常廣、下村、中島と3人揃っての撮影に続いて、大学のマスコット「EAGO(イーゴ)」や応援団、チアリーダーも集結。19時45分、野球部員たちによる盛大な胴上げをもって、青山学院大学のローラーコースターのようなドラフト会見は幕を閉じた。
使い古された常套句だが、プロ野球選手にとってドラフト会議はスタートラインでしかない。それでも、10月26日の青山学院大学には、たまたまその場に居合わせただけの取材者にも“明るい未来”をイメージさせるだけの祝祭感があった。新井監督が中島に伝えたように、彼らがプロの世界で――願わくは、ドラフトの思い出が上書きされてしまうくらいの晴れ舞台で――再会する日を楽しみにしたい。
<前編から続く>