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「ホンマに初球から行きよった」阪神・岡田監督が明かした山本由伸攻略のカギ…佐藤輝明の盗塁と昭和の打撃「真っ直ぐ打てしか言うてないよ」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2023/10/29 13:40
日本シリーズ第1戦、オリックスのエース山本由伸を攻略し8-0で完勝した阪神・岡田彰布監督
全く無警戒のオリックスバッテリーの裏をかいて佐藤がヘッドスライディングで二塁に立ったとき、虚を突かれたマウンドの山本には少なからず動揺があったはずである。
ノイジーの右飛で佐藤が三塁に進むと、すかさず「7番・指名打者」に抜擢した渡邉諒内野手が詰まりながらも中前に落として最初の1点が刻まれた。
さらに続く木浪聖也内野手が右前安打で一、二塁とするが、ここで実は阪神側にミスが出ている。
9番・坂本誠志郎捕手への2球目、送りバントを試みた打球が山本と若月健矢捕手の間への小フライとなってしまったのだ。守備側にはこの打球をショートバウンドで処理して、三塁送球から併殺を狙うという選択肢もあったはずだ。少なくとも三塁で1つのアウトは確実に取れる。この試合で山本が立ち直るきっかけがあったとしたら、おそらくこの場面だったはずである。しかし打球を処理した山本は、迷うことなく直接捕球して1つのアウトを確保した。無警戒で盗塁を許し先制点を許した。山本の焦り、心理的な動揺が冷静な判断を狂わせた場面だったと言えるだろう。
そうして逆に自軍のミスを最小限にとどめた阪神打線は、そこから一気に山本を攻略していったのである。
2死一、二塁から1番・近本光司外野手が前進守備の右中間を真っ二つに割る三塁打で2点。さらに中野も左前に落として計4点。さらに勢いづいた6回には大山悠輔内野手の四球を足場に木浪、坂本の連打で山本をマウンドから引きずり降ろした。
「分析なんかそんなしてないよ、してない、してない。シンプルに。そこまで分析して打てるもんちゃうしな、野球というのは。シンプルに真っ直ぐをと、そういうことやんか」
試合後の岡田監督だ。
岡田司令による山本攻略が成功した背景とは…
この日の試合前のミーティングで山本攻略のために出された指示は、真っ直ぐ狙い一本という当たり前といえば当たり前のものだった。