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今季の出場わずか4分…“稀代のパサー”青山敏弘(37歳)がインサイドキックからやり直している理由とは?「今の自分は試合に出るレベルにない」 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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posted2023/10/25 11:04

今季の出場わずか4分…“稀代のパサー”青山敏弘(37歳)がインサイドキックからやり直している理由とは?「今の自分は試合に出るレベルにない」<Number Web> photograph by Atsushi Iio

今季でプロ20年目を迎えるサンフレッチェ広島MF青山敏弘(37歳)

――昨季、ミヒャエル・スキッベ監督が就任して、青山選手の出場機会がどんどん少なくなっていった。でも、「このサッカーをやっているとうまくなる」など、ポジティブな発言が多いですよね。

青山 チームのプレー強度と戦術の狙いが高いレベルにあると感じるんですよね。明らかにみんなが成長している。本物なんですよね。何人かの選手じゃなくて、チームとしてすごく成長している。実際に去年、ルヴァンカップ優勝という結果も出しましたし。本当に毎日の練習の質も高いんですよ。僕自身、できない部分が少なくなかったし、これが足りないんだなと、実力不足を痛感させられた。だからこそ、毎日そこに向かってチャレンジしていく。そういう環境はすごく楽しいなって。やっぱり楽しさがないと成長しないと思うし、単純に日々の練習における競争で負けたくないって思えるし、質を上げないと離されていく一方だなっていう危機感も覚えています。

――サンフレッチェを長く支えてきて、日本代表としてW杯にも出場した選手の口から「実力不足」という言葉が出ることに驚かされるというか……。若い頃なら対応できたけれど、今の体の状態や膝の状態だと、強度や運動量などでスキッベ監督の求めるものに足りない、ということですか?

青山 監督が求めるものっていうより、まず自分ですね。自分が納得できるプレーができてない。それは監督が代わったからできなくなったんじゃなくて、監督が代わる前から、J1で活躍するには自分は厳しいレベルだなって感じていたんで。

――城福浩監督の時代から感じていた、と。

青山 そうですね。でも、スキッベさんが監督になって、今の自分は試合に出られるレベルにないということをはっきりと提示してくれたのは、僕にとってありがたいことで。試合に出るべき選手が出て、結果を出していく。そういうチームの姿を見るのは、うれしいことでもあったし。だからこそ、僕としては、本来あるべき姿に戻すことをターゲットにできた。やっぱり青山敏弘ってそうだよね、っていうプレーを表現したいというプライドはあるんで。ただ、そんなにうまくスッとはいかない。

――だから、毎日のように居残り練習をしている。

青山 でも、当たり前じゃないですか。試合に出られない選手が人より多く練習するのは。少しでもうまくなってるなとか、少しでもいいパスを出したいなとか、そういうのを今、積み重ねていて、若い頃に戻ったような感覚ですよね(笑)。1回はできていたことで、2回目にチャレンジさせてもらえる選手ってそういないと思うんで。もう1回チャレンジする前に引退を余儀なくされたり、移籍することになる選手が多いのに、37歳の自分がグラウンドでチャレンジさせてもらえている。そのありがたさは感じているし、やらせてもらっているという感謝をどうにか結果として表したいなって思ってます。

――ただ、城福監督の時代から感じていたとはいえ、それまでずっとサンフレの看板を背負って試合に出続けてきて、突然、試合に出られなくなり、ベンチからも外れることが多くなった。簡単に受け入れられる変化ではなかったと思います。

【次ページ】 「新時代の到来」の喜びと葛藤

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