「ネーションズリーグの時と比べたらスッキリしていましたけど、自分の状態がなかなか上がらないことを気にしているのはわかりました。でも今年は西田も副キャプテンになったので、自分の調子だけじゃなく、チームのことも考えなきゃいけない。ネガティブな部分は見せないように、と気を張っているのが伝わってきました」

アジア選手権では同部屋だった小野寺（左）が、西田の様子を明かす　©︎Yuki Suenaga

　小野寺と山内晶大、関田誠大、高橋健太郎。チーム内でも年齢が近い4人は日頃から一緒にいることが多い。歳は離れているが、そこに西田も加わり、練習前後や食事の時にはそれぞれがいろいろな話をした。

「健太郎とかセキさん（関田）は『あのプレーよかったよ』とか、結構バレーの話もしていました。でもヤマ（山内）と僕はあまり深掘りしないし、僕はそもそもバレーの話もほとんどしないんです。西田も部屋にいる時はいつも明るかったし、古賀（紗理那）ちゃんと電話する時に僕もたまたまいた時があって、スピーカーにしたまま話し始めたから僕が『こんばんはー』って言ったら、古賀ちゃんに『イヤフォンつけて』と叱られて（笑）。帰ったらどこに行こうかな、何食べようかな、とか。僕と西田は本当に他愛ない話ばっかりでしたけど、日に日にパフォーマンスがよくなるのにつれて口数も増えたし、決勝へ向けて気持ちもたぎる。『やるしかねぇ』って熱くなっていたから、元気になったなぁって。僕らが何かしたわけじゃないですけど、西田が元気になるのは、やっぱり嬉しかったですね」

母の教え「言ったからには必ず」

　五輪予選も、内容や結果は思い通りとは程遠かった。だが、ネーションズリーグからアジア選手権へと調子と士気を高めていったように、西田は試合を重ねるごとに“らしさ”を取り戻していく。

　いかなる時でも攻める。相手を吹っ飛ばしてやると打ち抜く豪快なサーブやスパイク。ラリー中もトスを呼び、どこからでも攻撃参加するアグレッシブな姿勢が「あの頃と重なる」と話すのは、初戦からすべての試合を会場で応援する母の美保さんだ。

五輪予選の初戦、山内と気合いの握手をする西田。強い思いを持ってこの大会に臨んだ　©︎Yuki Suenaga

「高校を卒業したばかりの頃を見ているみたいなんです。とにかく『俺に持って来い』と、力づくでも決めるし、そこまでやるなんてバカじゃないの？　というぐらい、あれこれ考えずにガツガツ全力でプレーする。だから、エジプトに負けた日も勝ったとか負けたよりも、“戻ったな”と。失敗するところも、サーブも。さんざん悪いところを出してきたから、あとは上がるだけ。有志にはいつも『言ったからには必ずやれよ』と言ってきたんです。だから今回もそう。『ここで（五輪出場権を）獲ります』って言ったでしょ。だったら獲りなさいよ、と。本当に行きたいのはわかるから、あとは有言実行するだけですよ」

　そして、迎えたセルビア戦。日本代表にとって“勝負の3連戦”と位置付けた試合は、まさに西田の武器と気持ちをすべて集約するような展開となった。

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