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「西田が元気になるのは、やっぱり嬉しかった」仲間たちも喜ぶ“ガツガツした西田有志”の帰還…マイクを向けられても素直に笑えなかった理由
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuki Suenaga
posted2023/10/07 17:35
セルビア戦でチーム最多となる16得点を挙げた西田有志(23歳)
2セットを連取してからフルセットまでもつれたフィンランド戦。翌日のエジプト戦は3セットを取られ、逆転負けを喫した。世界ランキングも対戦成績も関係ない。五輪予選という得体のしれないプレッシャーの中、ここまで積み上げてきたものを普通に発揮することがどれほど難しいか。日本代表はかつてない苦しさに直面し、そこからどう這い上がるかを試されていた。
もがき、悩み苦しんだ西田の今シーズンとまさに同じだ。
昨シーズンから原因不明の体調不良に悩まされ、検査を繰り返してもこれという要因は見つからなかった。症状は改善せず、バレーボールに向き合うどころか、「自分はこの先どうなるのか」と得体の知れない不安に押しつぶされそうな日々を過ごしてきた。
回復し、練習や試合に復帰できるようになっても、いきなり跳べるかと言えば無理な話。トレーニングもまともにできていないうえに、試合勘が失われ、ここまで積み上げてきたジャンプや数々のスキルを発揮することなど不可能だった。
「外してくれ」失意の西田、復活の兆しは?
それでも時間は流れ、リーグが終わればあっという間に日本代表シーズンが始まる。しかも今季は五輪予選という最大のターゲットがある。世界ランキングを少しでも上位にするためにはネーションズリーグでも結果が求められていた。
タンクに必要な燃料すらない西田にとって、戦い切るのは困難だった。ネーションズリーグでは自身が描くイメージと現実のギャップに打ちのめされた。主要国際大会で46年ぶりとなるメダルを獲得したネーションズリーグの準決勝、3位決定戦も腰痛で出場することもできずに終わる。またすぐに次の大会へ向けた合宿が始まることはわかっていても「もう俺はいいから外してくれ」と思い詰めるほど、失意の中にいた。
ようやく復調の兆しが見えたのは、8月にイランで開催されたアジア選手権。それでも大会が開幕した直後はまだ口数も少なかった。そう明かすのは、同部屋だった小野寺太志だ。