ボクシングPRESSBACK NUMBER

「大谷翔平君と尚弥はゆとり世代の成功例」大橋秀行が語る井上尚弥の“本当の強さ”とは? マス・ボクシングで感じた衝撃「ロペスと同じだ…」

posted2023/10/09 18:08

 
「大谷翔平君と尚弥はゆとり世代の成功例」大橋秀行が語る井上尚弥の“本当の強さ”とは? マス・ボクシングで感じた衝撃「ロペスと同じだ…」<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

2023年7月、2団体王者スティーブン・フルトンを破り4階級制覇を成し遂げた井上尚弥。大橋秀行会長が語る“モンスター”の本当の強さとは

text by

森合正範

森合正範Masanori Moriai

PROFILE

photograph by

Hiroaki Yamaguchi

のちに軽量級の伝説的王者となるリカルド・ロペスと拳を交えた大橋秀行は、忘れがたい輝きを残して現役生活にピリオドを打った。その後、自ら立ち上げた大橋ジムの会長として、強者との闘いを追い求める“大橋イズム”をさらに進化させる“モンスター”と巡り合う。全4回にわたるロングインタビューの最終回では、名王者から名伯楽へと華麗な転身を遂げた大橋が、井上尚弥の衝撃と「本当の強さ」について大いに語った。(全4回の4回目/#1#2#3へ)※文中敬称略

リカルド・ロペスは「はるか宇宙圏にいる感じ」

 1990年10月25日、後楽園ホール。リングでリカルド・ロペスと向き合った大橋秀行は、すぐにこれまでのボクサーと間合いが違うと感じた。

「距離というか、もう空間が違う。俺は(接近戦の多い)韓国の選手に没頭していた。でもロペスはその距離にいないんです。はるか宇宙圏にいる感じですよ。いつも地球内で闘っていたのに、宇宙圏での闘いになっちゃった」

 だが、1ラウンド、大橋は右を当てる。ロペスがぐらついた。効いている。「いける!」。そう思った瞬間、トレーナーが練習を見て真っ青になっていたことが頭をよぎる。

「もしかしたら罠があるかな、と躊躇しちゃったんです。あそこで一気に勝負にいけばよかった。悔やむとしたら、それだけです」

 立ち直ったロペスは足を使ってきた。前後だけでなく横への動きが速い。これまで味わったことのない感覚。これには大橋も驚いた。

「ああいうパパッと横の動きをする人って、いなかった。本当に異次元の空間でしたね」

 ロペスの突き刺すような左、右ストレートを浴びてキャンバスに崩れ落ちた。4回に1度、5回に2度倒され、KOで王座を失った。

 だが、対戦したことに後悔は一切ない。ロペスがスター街道を歩み、奪ったベルトを21度防衛する姿をずっと見ていた。

「嬉しいですよ。だって、あの後10年近く、ずっと『前チャンピオン』のままですもん。ジムの会長をやっているのに、元じゃなくて前チャンピオンですよ。張正九にしても、ロペスにしても、対峙した人間しか味わえない、言葉にできないことがあるんです。それを言葉にできるのは大きな財産ですね」

【次ページ】 2度目の世界王座獲得も、28歳で引退

1 2 3 4 NEXT
#大橋秀行
#井上尚弥
#大橋ボクシングジム
#米倉健司
#ヨネクラボクシングジム
#リカルド・ロペス
#張正九
#崔煕墉
#チャナ・ポーパオイン
#八重樫東
#ローマン・ゴンサレス
#井上拓真
#スティーブン・フルトン
#大谷翔平

ボクシングの前後の記事

ページトップ