ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
棚橋弘至が“アントニオ猪木の等身大パネル”を道場から外した日「都合のいい話ですが…」新日本のエースが告白する“歴史の分岐点”の話
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/10/05 11:03
ドキュメンタリー映画『アントニオ猪木をさがして』にも出演している棚橋弘至
――「闘魂」は受け継げなくても、猪木さんのプロレスに対する姿勢は引き継いでいける、と。
棚橋 そうですね。プロレスを世間に認めさせてやるんだっていう。もっと知ってほしい、こんな面白いジャンルがあるんだっていうところは、僕も受け継いでると思います。あと猪木さんって信念があるというか、頑固じゃないですか。人の意見は聞かないというか(笑)。そういった意味では、僕も人の意見を聞かない、頑固なんで。
――IWGPヘビー級王者になったばかりの頃、昔からの新日本ファンからあれだけ「新日本らしくない」と言われても、絶対に自分のやり方を曲げませんでしたもんね。
棚橋 だから何年か後に『棚橋弘至をさがして』という映画が出るかもしれませんね(笑)。ただ、僕はまだ途中経過なので。プロレスは結果も大事ですけど、フィニッシュに至るまでの試合内容も大事なので、棚橋弘至が完結するまでの途中経過を楽しんでもらいたいですね。
棚橋の思い「現役生活も終わりが見えてきてる」
――棚橋さんは、来年デビュー25周年というベテランになられて、これからのご自身の役割についてはどう考えていますか?
棚橋 現役生活も終わりが見えてきてるので、コロナの前だったら「もう新日本は大丈夫だな」「やり尽くしたな」という思いで安心して引退できたと思うんですけど。せっかく盛り上げた新日本プロレスが、コロナという自分たち以外の要因でまた苦戦を強いられたので、もう一回盛り上げたい。「V字回復の立役者」と言っていただけましたので、今度は「W字回復の立役者」として(笑)。コロナ禍以前よりも盛り上げてゴールしたいと思ってます。
――新日本のプロレスを世界に届けるというのは、猪木さんもずっと取り組まれていたことですけど、それが今はどんどん広がっている時代でもありますしね。
棚橋 そうですね。新日本プロレスワールドという世界中で観られるインターネット動画配信サイトもできて、そこは猪木さんの時代にはなかった部分なんでね。ネットの力によって、世界で「アントニオ猪木は知らなくても、棚橋弘至は知ってる」という人が増えるかなと思ったんですけど。世界的な知名度では中邑のほうが有名なので、「あの野郎……」という思いもありますが(笑)。その反骨心も持って、猪木さんが作られた新日本プロレスをもっと世界に広めていきたいと思います。
〈若手だった棚橋が猪木の問いかけに睨み返した02年「猪木問答」の真相が明かされたインタビュー前編も公開中です〉