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クアルタラロ「いいレースをする自信はあった」…インドGPでヤマハとホンダが突然の快走を見せたワケ《日本GPも期待できるか?》
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2023/09/28 11:06
クアルタラロの3位表彰台は、4月のアメリカ以来今季2度目だった
しかし、優勝争いまでいけないところに、ヨーロッパメーカー(ドゥカティ、アプリリア、KTM)と日本メーカーの差を感じる。その要因についてこれまでもいろいろ書いて来たが、エアロ開発競争が激化したこの2シーズンは、その効果を最大限に生かす手法の違いが、ますますその差を広げてしまったようだ。
エアロが注目されたのはいまから7、8年前。ドゥカティが「ウイリー対策」として投入したのが始まりだった。特に共通ECUが採用された16年からは電子制御で細かいコントロールが出来なくなったことから、加速時のウイリーを抑制するためにウイングをつけてパワーをより使えるようにした。
その後、エアロ効果はマシンコントロール全般に及び、次々に斬新なアイデアを投入するドゥカティを始めとするヨーロッパメーカーに日本メーカーは差をつけられた。しかし、そうした新しいアイテムがパフォーマンスを発揮するためにはサーキットごとのデータが必要であり、初開催となったインドGPのブッダ・インターナショナル・サーキットでは、ヨーロッパメーカーと言えど他のサーキットに比べてアドバンテージを発揮することが出来なかったようだ。
エンジニアによる空力分析
その理由をあるメーカーのエンジニアはこう分析する。
「いまのMotoGPマシンはサーキットによってエアロパーツの選択と(シーズン2種類まで)、ウエイト(重り)の位置を変えてベストなバランスを得るための作業が必要になる。そのためには、車体の最低重量157kgより出来るだけ軽く作り、軽くなった分のウエイトをマシンの適所に配置していく必要がある。
インドでヨーロッパメーカーのアドバンテージが減少したのは、初めてのサーキットでデータがなく、アドバンテージを思うように発揮できなかったから。こうしたことは4輪ではあたりまえに行われているが、ヨーロッパメーカーはこうした手法をMotoGPマシンにどんどん取り入れている。それに対して日本のメーカーはルール通りの車重でマシンを作り、エアロそのものだけでバランスを取ろうとしている」