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高校時代の通知表は“オール5”「勉強よりバレーボールの方が難しい」マジメすぎるセッター関菜々巳(24歳)のお悩み相談
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2023/09/22 17:03
東京五輪落選の悔しい思いをバネに、再び日本代表のセッターに定着した関菜々巳(24歳)。好調なアタッカー陣を活かし、チームをパリ五輪へ導けるか
「すごいアタッカーばかりだから余計に、自分のせいだ、って思っちゃうんです。去年の世界バレー(世界選手権)でも1次リーグでブラジルに勝った時、嬉しかったけどそれ以上に『私がもっとちゃんとトスを上げられれば簡単に勝てたのに』と思って、嬉し泣きじゃなく、悔し泣きしました」
やればやるだけ点数になって返ってくるテスト勉強とは違い、いくらやってもバレーボールの正解はなかなか見つからず、見つかった、と思ってもまた遠ざかる。手ごたえをつかんでもまた相手が変われば準備する数も増え、前回通った攻撃も同じように通るとは限らない。
「自分がいいトスを上げた、よし100%、じゃなくて、決めてもらえないと勝てない。ほんと、テスト勉強だけの人生だったら楽ですよ。できなくても自分の問題で終わるじゃないですか。でも今この立場は違う。コートに立つ6人が、それぞれの役割を果たさないとチームが勝てない。『自分のせいだ』じゃなく、日の丸を背負っている以上、日本代表としての結果につながる。その大きさって、ほんと、とんでもないです」
それでも、どれだけの重責を担っても「やり抜く」と決めてコートに立つ。1本が決まらず、内心では「どうしよう」と焦りながらも冷静を装い、また次、と仲間の顔を見てサインを出す。
「ネーションズリーグでも合宿でも、たくさん悩んだし、そのたびもう嫌だと思うこともあったんです。でも、誰に話を聞いても、“日本中に何千といるバレーボール選手の中で、ここに立てるのはこの14人だけ、スタメンセッターは1人だけなんだよ”と言われて、本当にありがたいことだな、と思ったんです。だから、少しでも楽しみたい。今は全然、余裕ないですけど(笑)、でもここに立てる喜びは大事にしながら戦いたいです」
悔し涙ではなく、歓喜の涙を
残りの3連戦はベルギーから始まり、翌日は世界ランク1位のトルコ、そして最終日は世界ランク4位で昨年の世界選手権・準々決勝で惜敗を喫しているブラジル。これまで以上に熾烈で、何より結果だけが求められる戦いだ。
そこで日本がいかに戦うか。飽きるほど繰り返してきた練習の成果が発揮されることを願うとともに、生真面目で、泣き虫な努力家が全力で楽しむ姿が見たい。きっと、余裕はないだろうけれど。
すべてを出し切り、笑顔で、歓喜の涙を流す。その瞬間を心待ちにしている。