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「なぜ石川真佑ベンチスタート?」は“最強布陣”への準備…バレー女子代表の序列に変化「日本が勝てば誰が出てもOK」「モヤモヤはない」
posted2023/09/19 11:03
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Yuki Suenaga
日替わりのヒロインが、試合を終えた直後のミックスゾーンで記者に囲まれる。
ペルー戦に続きストレートで勝利を収めたアルゼンチン戦後も同様の光景が広がる中、取材に応じる選手の後ろを、石川真佑は眉間にしわを寄せ、子どものように口を尖らせながら歩いて来た。
第2セット終盤、リリーフサーバーで投入された際のミスがその顔にさせたのだが、表情は明るく、笑っていた。
「あの1本、くぅー、っていう感じです。攻めよう、と(コートに)入ったけれどトスがうまく上がらなかった。修正できたらよかったな、って思います」
石川がベンチスタート、なぜ?
9月16日にパリ五輪予選が開幕。石川はベンチスタートだった。
大会前に露出が多かったことや、2021年の東京五輪でも主軸を担い、昨年オランダとポーランドで開催された世界選手権でも活躍した姿を覚えている人からすれば、石川のベンチスタートは意外に映るかもしれない。ましてや所属する東レでも、さらにさかのぼれば中高生時代から全国大会を数々制するなど華々しい経歴の記憶があるならなおさらだ。
だが試合を見れば、納得もするはずだ。
同じポジションに入る古賀紗理那、井上愛里沙がそれぞれの役割を果たしている。ペルー戦では古賀が前衛、後衛から鋭いアタックを次々見舞い、アルゼンチン戦では井上が相手ブロックをうまく使った技ありのスパイクや、古賀と同様にスピードのあるバックアタックでチーム最多得点を叩き出した。
古賀も井上も「誰が出ても、全員が助け合う気持ちで臨んでいる」と口を揃えるように、誰がいい、誰が悪い、ではなく、誰が出てもいい。そして現状は古賀、井上がレフトのポジションに入り、守備の面でも貢献度の高い林琴奈がセッター対角のオポジットの位置に入る形が最もフィットしている。
石川も、自身の役割を理解して受け入れていた。