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「ラグビーとスクラムは別競技」の声も…《W杯イングランド戦》敗れてもなお“収穫アリ”日本代表チームが自信を深めた「ある理由」
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byAFLO
posted2023/09/21 17:03
フォワード陣は並々ならぬ思いで挑んだというW杯イングランド戦のスクラム。最前列は右から稲垣、堀江、具
「やられる前にやる、という所がすごく大事かなと。そういうマインドなり、メンタリティなりを持って練習をして、試合で一発目から出せるようにしたいですね」(長谷川コーチ)
その一発目が、まさか味方のインゴールノックオンによって、開始早々に訪れるとは。
前半1分、FBセミシ・マシレワが自陣インゴールで落球。日本はいきなり、自陣ゴール前での相手投入スクラム、という土俵際に立った。
ここでファーストスクラムをセットするイングランドの所作は、舌舐めずりにも見えた。
アルゼンチンとの大会初戦では、FLトム・カリーを退場で欠きながらもペナルティを奪った。FW第1列の選手層はW杯本番でローテーションできるほど厚い。両PRを1番ジョー・マーラーと3番カイル・シンクラーに替え、日本戦に臨んでいた。
そして何が起きたか。
傍目には何も起きなかった。日本のスクラムは美しく静止していた。かたやイングランドのFLコートニー・ロウズは必死に脚を掻いていた。
イングランドに通用した日本チームのスクラム
この日のスクラムのフォーカスについては、途中出場したHO坂手淳史が戦前に明かしていた。
「まずは3番(具)を前に出さないといけないと思うので、1、2番が3番を助けて、3番が真っ直ぐに組めるような状況を作っていきます」
スクラムは「基本的にアタックが有利」(長谷川コーチ)という。イングランドはその有利な自軍投入スクラムを前半5回連続で続けたが、日本は動じなかった。
むしろ圧力をかけていた。
「最初のスクラムでも耐えました。かなり自信になりました」(FLリーチマイケル)
スクラムはゲームプランの支柱だ。攻撃の起点となるスクラムで完敗すると、全体のプランは足元から崩れる。56分まで1点差(12-13)の接戦は、スクラムの奮闘なしには辿り着けない場所だったろう。