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25歳の海外挑戦は遅いのか? “三笘世代”のファンタジスタ伊藤涼太郎「神様がくれた最後のチャンス」「航くんは今、リバプールにいる」 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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posted2023/09/20 11:02

25歳の海外挑戦は遅いのか? “三笘世代”のファンタジスタ伊藤涼太郎「神様がくれた最後のチャンス」「航くんは今、リバプールにいる」<Number Web> photograph by Atsushi Iio

今夏、ベルギー1部シント=トロイデンに移籍した伊藤涼太郎(25歳)。開幕戦から存在感を発揮し、先日の第8節で移籍後初ゴールを決めた

 伊藤は現在、25歳。海外挑戦の年齢としては若くない。そんな伊藤にとって指針となるのが、遠藤の存在である。リバプールでプレーする日本代表キャプテンが浦和からシント=トロイデンに移籍したのは25歳の夏――今回の伊藤とまったく同じタイミングだったのだ。

「航くんとはレッズ時代に仲良くさせてもらっていて。航くんが海外に行くとき、僕はレンタル移籍をしていたのでレッズにいなかったんですけど、正直、疑問だったんです。この年齢で海外に行くのかって。でも、ここで結果を出して、シュツットガルトでも、日本代表でも活躍して、今、リバプールにいるという現実がある。25歳で海外に行くのは遅くないし、チャンスは転がっているから、それを掴めるかどうかは自分次第なんだと航くんが証明してくれた。僕も負けていられないっていう気持ちが強いです」

 シント=トロイデンはフィンク監督のもと、ボールを保持することで主導権を握ろうとするスタイルを志向しており、伊藤はボランチとして開幕からスタメン出場を果たしている。

 ボール非保持では3-4-3だが、ボール保持時はダブルボランチが縦関係となり、伊藤はトップ下の役割をこなす。

「ベルギーリーグは、大げさに言うと、Jリーグとはスポーツが違うというか。強度、インテンシティはすごく高くて、スピーディです。ただ、プレッシャーが速いぶん、逆を取れたら簡単に抜けるなっていう感覚もあるんで、手応えも感じています。実際、まだ自分の得点はないですけど、チャンスだったり、自分がフィニッシャーになる場面は作れている。ここでは気負うことなく、のびのびとやれていて、自分らしさを出せていると思います。浦和のときに起用された試合で何もできなかったのは、メンタル面の問題だったと思うんですけど、それはもう克服できたので」

浦和時代の後悔「本当にもったいなかった」

 メンタルの弱さ――これこそ、浦和で輝けなかった最大の理由だった。最初に在籍した1年半に関して、かつて伊藤自身はこんなふうに分析していた。

「ベンチに入れないのも仕方がないな、と思ってしまって。(興梠)慎三さんとか、(柏木)陽介さんとか、代表クラスの選手たちと一緒に練習していることに満足していたというか。今思えば、本当にもったいなかったなって」

 水戸と大分での武者修行を経て、20年に復帰した際は、過去の反省からポジションを奪ってやるんだ、という野心を隠さなかったが、それでも活躍することはできなかった。

「何ひとつ爪痕を残せていなかったので、練習中もここでボールを失ったらどうしようとか、試合に出るためにはここを直さないといけないとか、ネガティブなことばかり考えてしまって。なかなか自分のプレーを出せなかったですね……」

 22年の新潟加入後も、気負って空回りしてしまう時期があった。そんな伊藤に手を差し伸べてくれたのは、松橋力蔵監督だった。

【次ページ】 心に刺さった松橋監督の言葉

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