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17歳の岩渕真奈が“理想”と語ったある意外な選手とは?「努力してるけど、普段の様子からは全然見えないの」〈30歳で現役引退〉
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byHitoshi Mochizuki/AFLO
posted2023/09/07 17:00
ベレーザ時代の岩渕真奈(2009年、当時16歳)。女子サッカーに長く貢献してきたドリブラーは、9月8日の引退会見でどんな言葉を残すのだろうか
広報の助けもあり、めんどくさかったであろうそんな連載の取材に、岩渕はよく付き合ってくれた。ある時、“浅田真央さんは、あの華奢な見た目からは想像できない高重量のバーベルをあげるらしい”というテレビ番組で得た情報の話題になったことがある。その時、岩渕は「そういうの、良いなって思います。すごい努力とかしてるけど、全然普段の様子からは見えないの」と屈託なく話していた。
この2010年はベレーザで背番号10を背負い、高校3年生ながら大人と同様の期待をされる中で苦しみながら結果を出した1年でもあった。こちらの考えすぎかもしれないが、そんな苦労は見せずにピッチではただ輝いていたい、そんな思いを抱えているように聞こえた。
ケガとの戦いでもあったサッカー人生
翌2011年は高校も卒業し、本格的な活躍を期す時期に入ったが、この頃から今度は継続的に負傷に悩まされた。
優勝したドイツW杯では右第5中足骨骨折を抱えており、短い時間の途中出場の連続に終わった。結局大会後にボルトを入れる手術をするも翌2012年ロンドン五輪後にまたメスを入れた。2015年カナダW杯の年は膝の靭帯をなんども負傷した。当時、所属はバイエルン・ミュンヘンだったが、2015年後半は帰国し、約半年間も日本で治療とリハビリに努めた。この頃になると自身の負傷とプレースタイルの因果関係がはっきりしてきた。
この年、2度も外側靭帯を負傷しているが、男子チームとの練習試合でのプレーが原因だった。いずれも持ち味である高速ドリブルからの急な切り返しが原因だった。
自分の特徴を最大限に理解しつつ、「普通のプレイヤーにはなりたくない」と口にした。
キレという魅力はそのままに、対策を講じようとトライもしていた。だが、負傷は断続的に繰り返され2017年3月にはシーズン半ばにも関わらずバイエルンとの契約解除で不本意ながら帰国、再び日本でリハビリに努めた。INAC神戸に加入、2019年フランスW杯では1得点をあげたがこの時も負傷中だった。