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3度の怪我を乗り越え、現在絶好調。
岩渕真奈「普通にはなりたくない」
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byItaru Chiba
posted2016/02/26 10:30
18歳でワールドカップデビューした岩渕もいまや22歳。なでしこの切り込み隊長の座は譲れない。
「まあ、普通のプレイヤーにはなりたくない」
2度とも、怪我は男子との練習試合の際に起きた。体格差とスピード差に頭も体も反応したが、唯一ついていかなかったのが靭帯だった、と苦笑する。
当然、周囲からの声も耳に入る。
「80パーセントでやればいいんだよとか言われたり。でも100パーセントでも相手を抜けないのに、試合で80パーセントなんて無理だし。さすがに2度目のときはもうあのドリブルは出来ないなとか、逆にあれがなくなったらブッチーじゃないって言われたり」
だが、そんな声でぶれる岩渕ではない。
「試合中は意識できないですけど、練習中は無理せず2度で切り返したり左に変えたりしてます。何よりも、もう怪我したくない。だから、自分のプレースタイルも知ってる先生に手術してもらって、靭帯も強くもしてもらったんで(笑)。だからまあ、もう切れないように気をつけながらプレーします」
一方で、彼女の代名詞でもあるドリブルと切り返しへの自負ものぞかせる。
「まあ、普通のプレイヤーにはなりたくない。でもしょうがないって片付けてたら、またやるって思われそうでいやですけど」
原因は分かっても、対応策は出ない。今出せる結論は、少し気をつけながらプレーするということだけだ。
契約延長したクラブは、怪我にも温かく対応してくれた。
「厄年じゃないのに厄年かって」と自らツッコむほどの1年間ではあったが、良いこともあった。何と言っても、W杯で得点を決めた。準々決勝オーストラリア戦、終了間際の岩渕のゴールで日本は90分で試合を終えることができた。そして、バイエルンからは契約延長を提示された。
「8月の怪我の前から言われてました。去年1年間である程度評価をしてくれてて。怪我をして1カ月日本に帰ることになったら『日本で考えて来いよ。家族とかいろんな人に相談していいから』って言われました」
クラブの、アットホームな温かい対応は身にしみた。
「怪我も多いし、日本にいたほうが楽なのかなって監督に言ってたんですよ。治療もやりながら日本でプレーしたほうがいいのかなあって。そうしたら、監督に今じゃなきゃ海外でできないだろって、すごい説得されて。良い監督なんですよ本当に。めちゃめちゃ良いですよ。だから残ったっていうのもあるし」