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バレーボールPRESSBACK NUMBER
木村沙織がバレーボール人生で初めて体験した「悔しい」とは? 母になった“天才少女”が未来を担う小学生たちに伝えたこと
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byAsami Enomoto
posted2023/08/31 17:04
一児の母となった木村沙織。先日は初めて小学生の全国大会のアンバサダーを務めた
妊娠、出産を経て迎えた初めての夏。木村もまた、新たな気持ちでバレーボールと向き合う機会を得た。
小学生の全国大会とはいえ、公の場に出れば当然、記者からの質問にはアンバサダーとしての感想だけでなく、間もなく始まる五輪予選についての見解も含まれた。注目選手や代表選手に向けたエールを、と求められると「私は応援するだけで、一人のバレーファンとして楽しみにしている」と答えるのが常だが、そんなやり取りが繰り広げられるのを見るたび、やはり感じるのはバレーボール界における“木村沙織”の需要が今もなお高いこと。
戦術やコンセプトを遂行する組織的なバレーを展開するチームが、男女を問わず世界でも上位へ進出する。そんな現状がありながらもなお、男子よりやや寂しい女子の試合で観客席を見上げながら、事あるごとに聞くのは「木村沙織さんみたいな選手、いませんかね?」。
「木村沙織、第三章始めます」
母となり、さすがに現役復帰の声はなくとも、解説者としてももっと露出の機会が増えてもいいのではないか、と願う声は少なくない。
「迷解説ですよ(笑)。そもそもイメージないでしょ」
人前で話すのが苦手、というのはもちろんだが、理由はただそれだけではない。バレーボールを伝える仕事をするからにはきちんと準備をして、勉強して臨みたい。やるからには「これでOK」ではなく、徹底して全力で。バレーボールへの愛と真面目さ、それもまた現役時代と変わらぬ姿勢でもある。
「今は子育てがメインですけど、これから少しずつ環境も変わっていく中で仕事も両立できたらやっていきたい。第三章っていう感じなのかな。現役時代が第一章、引退してカフェをやってきた大阪ライフは第二章だったから、木村沙織、第三章始めます」
五輪でメダルを獲り、結婚して、以前からの夢だったカフェを開いた。自らお菓子を焼き、好きなメイクや洋服の仕事もしながら、長い年月を経て、愛する我が子が誕生した。
母として、どんなこれからを生きるのか。
「何しようかな(笑)。でもどんな生活になるのか、それはそれで、ちょっと楽しみです」
寝起きの息子を抱き、満面の笑みを浮かべる。第三章も、新たな幸せの始まりだ。
(…前編「木村沙織が初めて語る出産秘話」編から続く)