自身も小学2年生から秋川JVCでバレーボールを始め、後に進学した下北沢成徳の小川良樹前監督から「当時から沙織はずば抜けた天才少女だった」と何度も聞いた。実際に成徳学園中（当時）にスカウトされたのだから実力は紛れもないのだが、木村が振り返る小学生時代は楽しさよりもむしろ悔しさを覚えた時期だったと回顧する。

「当時強かった東金町ビーバーズに負けて、バレーボール人生で初めて『悔しい』という思いをみんなで共有した。あの感情が未だに残っているんです。だから同じように、今日負けた悔しさとか、スパイクが1本決められなかった悔しさが子どもたちに残って、これからの成長につながるんだろうな、と思うし、私も小学生の頃の感情をずっと覚えているんです。

　今はわからないかもしれないけれど、中学とか高校とか、バレーボールを続けて、大事な試合になるにつれて“あの大事な1本”という経験が絶対にある。それが小学生の今、経験できるってすごいことだし、人生のものすごいプラスですよね」

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表彰式では子どもたちと一緒に写真に収まった木村沙織。忘れられない夏になった（筆者撮影）

　メダルと一緒に言葉をかけたのも、そのわずかなやり取りが未来につながれば、と願ったから。

「全国大会でメダルをもらえる、表彰される機会って人生の中でなかなかない。少しでも、印象に残ってくれたらいいな、って。夏休みで宿題もあって、周りは絵日記に『プールへ行ってきました』『家族と旅行に行きました』って書く子がいっぱいいる中で、一生懸命バレーボールをして『全国大会に出て東京体育館で試合をしました』と書けるのはあの場に立った子たちしかいない。カッコいいし、できるならそのままずっと、バレーボールを好きで、頑張ってほしいですよね」

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